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□スノースマイル
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スノースマイル



 夕食の片付けを終えたところで。明日の朝食がないからコンビニに行ってくると言い出した封真に、神威も当然のようについていくつもりだった。

「寒いから、俺だけで言ってくるよ」

やんわりと断る封真を予期していなかった神威は。

「俺も行く!」

と一点張りの主張で、封真よりも先に玄関を飛び出していった。



 春先だと言っても、まだまだ気温は低い。威勢よく飛び出したまでは良かったが。ろくに外出する準備をしていなかった神威はあまりの寒さに、封真の言うことを素直に聞いとけば良かったと少し後悔した。

「だから来なくていいって言ったのに」

追いかけてきたらしい封真が、寒さに震える神威に向かって、持ってきた上着をかけると同時に呆れたように白い息を吐いた。

ごめん、と言いかけた言葉は声にならずに神威の胸をモヤモヤさせた。自分の行動を反省しつつも、やはり素直にはなれなかった。だって一緒に行くほうが嬉しいだろ?




ふてくされた表情の神威に、

「ほら、手」

横にいる封真から手が差し出された。

上着はどうにかなったものの、冷たい指先はよもや感覚はない。誘われるように温かそうな封真の手だったが。なかなか素直になれず、渋っていれば。無理矢理片方の手を捕まれ、封真のポケットにいれられた。

繋いだ手から伝わる封真の体温が凍った神威の手を徐々に溶かしてくれる。自分より大きく少しゴツゴツした手に、恥ずかしい思いよりも嬉しいのが勝る、なんてことを実感していると。

「本当、素直じゃないねー」

と言って笑い出した封真に腹がたったので。ぎゅーと思いっ切り繋いだ手に力を入れてやった。



 その後、慌てて出て来たせいで二人とも財布を忘れてしまい、余分往復するはめになってしまったのだった。



end.


Thanks!20,000over!
20080304

Thanks:BUMP OF CHICKEN

























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