なかなか眠れない。何度かモゾモゾと寝返りを繰り返していると。 「神威、うるさい。寝かせろ」 「なっ!俺だって寝たい!」 なのに眠れないんだ!と続く俺の言葉を遮るように。 「だったら早く寝ろ」 封真は不機嫌そうに神威に背を向けた。 寝れることなら、とっくに寝てる!心の中で封真を怒鳴る。けれど腹が立つのに、寂しさのが大きくて。 神威は封真の背中を見つめて、封真の馬鹿と、反らすように自分も背を向けた。 しかし寝ようと意気込んでみたところで睡魔は降りてこず、暗闇の中で頭は冴えるばかり。反射的に苛立ちを寝返りでごまかそうとして、しまった…と後悔した。 ひとつのベッドで一緒に寝れば片方が動けば、振動が伝わってしまうわけで。 目の前に横たわる背中が動き出した。またさっきみたいに機嫌を悪くさせてしまったのではないかと、焦る。 ごろんとこちらに向き直った封真に、寝たフリでごまかそうと、ぎゅっと目をつぶった。 けれど、予想していた不機嫌な声はいっこうに聞こえない。変わりに突然、温かいものに包まれた。 目を開けると、封真の顔が視界にいっぱいにあった。驚いて身じろいだ神威を、動くなと言って。ぎゅっと抱きしめた。そうして神威はやっと状況に気付いた。 「大人しく、寝ろ」 余程眠いのか、封真は囁くほどの声で。ぎゅっと神威を抱きしめる力が強くなった。 とくん、とくん 封真の鼓動が心地よくて。温もりが気持ちよきて。封真の腕の中が嬉しくて。 ――――あ、眠れるかも。 そう自覚すれば、さっきのが嘘のように眠気が降りてきた。まどろみの気持ちよさの中、封真の胸に顔を埋めた。 ―――封真に、感謝しなきゃな……朝起き、たら… おはよ……、の、ちゅぅで……も………――――― 驚く封真の反応が楽しみだ、そんなことを考えていれば。心地よい眠りに神威は意識を手放した。 end. by Clap 04 おやすみ、神威。 |