Clap Memory

□drown oneself
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【drown oneself】




息が上がり、顔が熱い。熱い、熱い。

…あんなの嘘に決まってる。




全力で向かうのは湖。熱くなる顔を冷ますように、足が早くなる。


「っ昴流!!」

着いたと同時に大声で叫んだ。この声が届くように。

「早く!早く、起きろ!」

湖の淵に手を掛けてギリギリまで身を乗り出す。



「この世界から早くっ「早く、―――何?」


遮る声にバッと振り向くと…あいつがいた。

「…な、んで」

体全身で警戒する。爪が伸び瞳が金色に変わるのがわかった。
しかし、そんな俺に怯むことなく、にこりと笑いかけてきた。



こいつは敵。タワー側の俺の敵。

――なのに、耳に残るのは囁かれた愛を意味する言葉。頭を巡るのはコイツの顔。俺を悩ますのは『好き』と伝えられた気持ち。

コイツは俺を苦しめて、どんどんおかしくする。


「なぁ、早くなんなんだよ。次の世界に行くってこと?」

「……だったら、なんだよ」

俺の返答に奴の笑みが消えた。

「そんなの、止めるに決まってる」

思いもよらない言葉に固まってしまった。奴は素早く俺に視線に合わせ、しゃがんだと思うと俺の腕を引っ張った。そのまま倒れ込むように俺はコイツの腕の中に……いた。

抱きしめられる腕の中は温かい。俺とコイツの心臓で鼓動が二倍五月蝿く鳴るのが聞こえる。

「なんで…?なんで、止めるとか言うんだよ!」

「その理由は前にも言っただろ?」


好き、ぽつりと囁かれた言葉は俺の中をじわりと支配していく。抱きしめながら何度も囁かれる。

「っ、やめ…!」
「やめない」

そう言って、さらに抱きしめられる力が強くなった。

「ちょっ、苦し…」
「好き」
「っ聞け!ほんと離せよ!」
「好きだ」


好き、好き、すき……甘く美しい、その言葉はただ俺を苦しめ、弱くさせる。耳を塞ぎたいのに、身体は歓喜する。

自分がバラバラでわからなくなる。だから、この力強い腕に自分をゆだねたくなってしまう。


「神威、好きだ」




いつかは別れる道なのに。
でも今だけは―――、



「うるさい」


ぶっきらぼうに呟くと。俺は自ら背中に手を回した。この選択が合っているのか、いないのか。

答えを見出ださないまま。この温かな腕の中で、すこし素直になってやろうと、目を閉じた。



end.


by Clap 03
















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