短編

えんどおぶざわーるど
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確か弓道部に入っている佐々木は、この前、なんかの大会で優勝したと聞いた。

いろんな事に、力をみなぎらせて輝く人。

こいつはきっと、俺や亡くなった少女とは1番離れた場所にいる。
それなのにこうして、他愛もない事をわざわざ話しにくる。
俺の指定場所である屋上に。

頭がよくて何でも持ってる奴というのは、何を考えてるかわからないものだ。

俺は小さく笑って、屋上から下を見下ろした。
真下のコンクリートは、ぽかぽかと太陽に照らされている。

「…そうだな。なんかもぅ、死んでもいいやとさえ思っちまうよな」
「…まぁたそれかよ」

佐々木は軽く笑う。
最初はこの笑い方が嫌いだった。
適当に流すような笑い方…見下されてると思った。

だけど俺は知ってしまった。

佐々木が、適当に話を流す奴じゃないって事。
屋上で顔を合わす間柄になって、1年近く。
俺は何度かこいつにだけは話していた。

…死について。


「だって、俺の命なんて消えても明日もドラマの続きはやるしさ。授業も、クラスでデキてる奴らの親密さも、ある程度進むだろ」
「…言ってる事がまとまってねぇぞ」

佐々木がまた笑う。
確かに俺の考えはまとまってない。
だからと言って、真面目くさった顔して、綺麗事めいた言い方でこの思いを誤魔化すつもりはない。



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