短編
□遠距離な恋人
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もう限界かな…
2年前までは、いつも隣にいた颯太の存在。
近所仲間から、自然な事のように恋人になった。
どんな喧嘩をしても、次の日は隣にいるのが当然だった毎日。
離れても大丈夫、なんて反対を押し切って、行きたい学校を選んだのは自分なのに。
町並みを抜けたアパートの小道は、一転して静かだ。
点々とある古い外灯の光と、ぼんやり顔を出す月の明り。
喧嘩の後、電話が来たらすぐにでも撤回するつもりだった。
いつでも向かえるよう、新幹線のパスも持って来てたのに…
だけど今日1日、携帯は鳴らなかった。
かける勇気もなくて。
…嫌われちゃったかな。
仲直りできないまま時間がたつのが、こんなに不安なんて知らなかった。
好きな人と距離がある冬が、こんなに寒くて寂しいなんて……
「さむ…」
アパートまでの少し蒼白い雪道は、ひどく長く感じる。
手袋をしてても、指の感覚がなくなってくる。
卒業まであと1年。
この距離が理由で、何度喧嘩した事だろう。
すぐ不安定になってしまう。
遠距離恋愛は、思ってた以上に自分の方が向かないみたいだ。
…もう、いいや
したい事を貫くと言い張った事、撤回しよう。
途中でもいい、帰ろう…颯太の近くに。
距離に負けて、喪うには大きすぎるから。
帰ったら、すぐ電話してそう言おう…
少し赤くなった鼻をすすりながら、顔をあげた。
「……春希?」
静かな雪道の先、アパートの前に佇む影。