短編

遠距離な恋人
2ページ/4ページ




もう限界かな…


2年前までは、いつも隣にいた颯太の存在。
近所仲間から、自然な事のように恋人になった。
どんな喧嘩をしても、次の日は隣にいるのが当然だった毎日。
離れても大丈夫、なんて反対を押し切って、行きたい学校を選んだのは自分なのに。

町並みを抜けたアパートの小道は、一転して静かだ。
点々とある古い外灯の光と、ぼんやり顔を出す月の明り。
喧嘩の後、電話が来たらすぐにでも撤回するつもりだった。
いつでも向かえるよう、新幹線のパスも持って来てたのに…

だけど今日1日、携帯は鳴らなかった。
かける勇気もなくて。

…嫌われちゃったかな。

仲直りできないまま時間がたつのが、こんなに不安なんて知らなかった。
好きな人と距離がある冬が、こんなに寒くて寂しいなんて……

「さむ…」

アパートまでの少し蒼白い雪道は、ひどく長く感じる。
手袋をしてても、指の感覚がなくなってくる。

卒業まであと1年。

この距離が理由で、何度喧嘩した事だろう。
すぐ不安定になってしまう。
遠距離恋愛は、思ってた以上に自分の方が向かないみたいだ。

…もう、いいや

したい事を貫くと言い張った事、撤回しよう。
途中でもいい、帰ろう…颯太の近くに。

距離に負けて、喪うには大きすぎるから。

帰ったら、すぐ電話してそう言おう…
少し赤くなった鼻をすすりながら、顔をあげた。

「……春希?」

静かな雪道の先、アパートの前に佇む影。



次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ