短編

寂しい微笑
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…始めて叔父さんと会ったのは、僕が小学5年生の頃。

東京からこっちに帰って来たのだと、父は叔父さんを家に連れて来た。

『こんにちは、凜君』
『忠人、凜はかなり人見知りするんだ』
『大丈夫、兄さん。何だか昔の僕に似てる…』

そう言って、そうっと僕の頭を撫でる。

優しくて寂しい……僕が目にしてきた中で、一番綺麗な笑顔を浮かべて。


雨は降り続いてる。

父の飲むお酒のグラスの音だけが静かに響く。
時間は9時をすぎていて、訪問者はぱたりとなくなった。
父にとってたった1人の弟の死はかなりこたえたらしく、お酒のペースはあがり、逆に言葉はどんどん重く少なくなっていった。

「あなた…少し休みますか?」

赤い顔をさせながら目をしばしばさせる父は、なんとなく年とって見えた。

「そういえば凜、忠人の所によく顔出してくれてたなぁ…」

母に促され立ち上がりながら、父は急にそう言って叔父さんの写真を見つめた。

「いつもあいつは1人が多かったから…ありがとうな」

そう言って、ふらふらした足どりで隣の部屋へ消えた。

「凜、お母さんもちょっとだけ休むから。だれか来たら起こしてね?」

前夜から叔父さんの危篤の知らせで側についていた母は、疲労感をただよわせている。
僕が頷くと、母も部屋を後にした。



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