短編

エイプリルフールの誤算
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馬鹿正直にしばらく体操着で校庭で待ってたらしい板津は、その後、さぼりと見なされ職員室に呼び出されてた。
帰って来てからの不愉快そうな態度に、俺は思わずほくそえんでしまった。
その快感が忘れられず、その次の年またも俺は板津を騙した。
クラスが離れたのに、わざわざ出向いて。

…まあこの頃には憎まれ口を言い合いつつ、顔合わせりゃ話すような間になってたわけだけど。


「これ、たまたま買えたから、やる」

やつの大好物な焼きそばパン。
…競争率高し。

きょとんとしてから、少し戸惑い気味に板津は受け取った。

「……さんきゅ」

それが焼きそばパンなのは袋だけで、唯一奴が大の苦手なチーズパンとも知らずに。
見た目そっくりなそれに、思い切りかぶりついて…次の授業、板津は出れなかったらしい。


そしてそして。

またも同じクラスになった、高校3年目の春。
俺は今年もこうしてやる気満々なわけだ。

「上田、今年はそうはいかないからな」

俺の頭ん中を読んだように、板津が振り返って警告してくる。

「え〜何のコト?」
「…白々しいヤツ」

軽く頭をこづかれる。

…こんなやりとりをしつつ、今日に限らず俺は浮かれてる。
また同じクラスで、前後の席になったのが思いのほか嬉しかったり。
思わず騙すのを忘れて、板津を見る。

最初はただ無愛想に見えた顔も、見慣れると少しずつ違う。



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