おさななじみ

おさななじみ
《エピローグ》

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「慎ちゃんが…嘘」

思わず呟くと、2人同時にが直人を見た。
したり顔の貴文と、苦い顔をする慎。

「でしょ?たぶんあの場所にいた誰もがなおちゃんと同じように思ったよ。でも本当。寝不足と栄養不足と精神的ダメージがいっきに出たんだろうね。その後は後で不機嫌オーラ丸出しなもんだから先生もびびってたし。いやぁ〜中毒症状おそるべし、だね」

まくし立てながら、貴文のテンションはどんどんあがっていく。

「中毒症状…?」
「なおちゃんの。あれは完全にそうでしょ。世の中完璧な人間ていないんだね。ていうか慎もちゃんと赤い血が流れてるんだね。俺よくわかったよ」

うんうん、と頷いている貴文を最終宣告と言わんばかりに慎が言う。

「小原、いい加減黙れ。ていうか、もう行け」
「はいはい。とにかく嬉しくてさ〜俺。昨日まで不幸のどす黒いオーラ放ってたのに、今朝来た慎見たら別人も別人で。こう全身から光がね…イテ」

元気な方の足で慎が貴文の足を攻撃し始めた。

「いった!容赦ないなぁ」
「俺みたいにお前も怪我したいようだな」

半ば本気な声で慎がにじり寄り、慌てて貴文は直人の背後にくっつく。

「わかったわかった。そろそろ撤退するよ」

言いながらも背中から直人に腕を絡めたまま、離れない。
なおちゃんふわふわしてる〜、なんて頬擦りするものだから慎の視線がいよいよ殺気だってきて、直人は慌てて身をよじった。

「あの、小原君」
「……よかったね、なおちゃん」

囁くように耳元で言われた。
覗きこんでくる瞳は相変わらず綺麗で、いたずらっぽく細められた。
その優しい声になんとなくじん、とする。

「小原」

動かないでなすがままの直人に、痺れを切らしたのか慎が貴文を呼んだ。

「じゃ、また聞かせてね。いろいろと…ね」

にこっと天使のように微笑んで、妖精のように軽やかに貴文が去って行く。
思わず放心して、その背中を見つめた。

「なんか、小原君には随分心配かけたみたいだね」
「ほっとけ。もともとあいつが変にかき回した節もあるんだから」
「でも…小原君のおかげでもあるよ」

ちらりと慎が直人を見る。
直人は昨日、慎の電話から貴文がかけてきた内容を話した。
聞き終わると、慎はため息をつく。

「あいつは、お前との事だけは昔から変に干渉してきたからな」



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