おさななじみ

おさななじみ《1》
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帰り道、慎のあとを直人は必死に追いかけていた。
自分より10cm以上高い背中のランドセルが揺れるのを見つめながら、小走りに追いかける。

結局、慎に殴る蹴るされたよしお君が大泣きした事で先生が駆け付け、その場は無理やり治められた。
その後一番先生に注意を受けたのは慎で、直人は申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
学校が終わった帰り道、慎の足取りは早くて背中は怒ってもみえる。

『…慎ちゃん…待ってよ』

必死に追いかけても、距離は縮まらない。

『…待ってよ慎ちゃん!』

どうにもできなくて、精一杯の声で呼び止める。
慎が、ようやく立ち止まった。

『ごめんね。慎ちゃん…僕のせいで…怒られて』

しゅんとしたまま慎の背中に向かって話す。

『怒ってる…?』
『…違うよ』

ゆっくり振り返る慎の表情は、やはり険しい。

『俺、やなんだ。なおくんが泣いてるの』
『慎ちゃん…』

きゅっと結んだ口元は怒ってみえたが、慎の口調は心の底から辛そうだった。

『なおくんが泣くの、やなんだ』

…目の前にいるおさななじみの少年は、本当に自分を大切にしてくれている。
それが、直人には嬉しかった。


懐かしい夢だった。

苦しそうな慎の表情と、言葉。
あれから今まで、あんな慎を一度も見た事はない。

「……ぅ…」

直人は朦朧とした頭のまま、ゆっくり起き上がる。
見慣れたグリーンのカーテンから覗く窓は、すでにオレンジ色に染まっていた。

「…もう夕方、か…」

呟いて、じっとりと汗で濡れたTシャツと短パンに気付く。触れると、自分が寝ているベットのシーツも濡れていた。

「……すごい汗…」

不快感にシャツを脱ごうとして、全身の倦怠感と下半身に鈍痛が襲う。

「……ッ…!」

声にならなくて、身を屈めたまま静止した。
痛みと共に、ようやく次第に現状を思い出して来た。

ここがいつもの自分の部屋な事。
高熱と痛みで、今日は学校を休んだ事。

それから、昨日の夜の事。


濃厚なキスの続きは、直人にとって予想すらできない内容だった。
あっという間に衣服は剥され、慎の指や舌が全身を這い、味わった事のない感覚に翻弄されていた。
思わずあげてしまった吐息や声の場所…首筋や耳、背中は何度も執拗に責められた。
自分自身聞いた事のない声に耐えられなくて、その感覚から逃れようとしてはあっさり引き戻されて繰り返された行為。



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