お題


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『使ってこれ』


差し出されたブルーの傘。
彼の名前は…笹原篤司(ササハラアツシ)。
焦げ茶の髪は地毛らしく、染めてないのが自慢だと言ってたのを聞いた。
整った顔立ち。
入学した時から目立ってた。
だけどその容姿に似合わず大口開けて笑う、飾らない人。
それが、僕から見た彼。
全く結び付かないクラスメイト。



放課後、降りやまない雨に僕は途方にくれてた。
天気予報であれだけ午後から降ると聞いていたのに、傘を忘れてしまった。

雨は苦手だ。

どんよりした空と、独特の臭い。
変に周りの音は吸い込まれ、静けさに孤独な気分になる。
周りは傘を持つ人、忘れた人に貸す人で賑わい、みんな帰って行く。
いつしか校舎玄関に立つのは、僕だけになった。
僕には特定の友人がいない。
帰る人もいない。
普段は、別に気にしないようにしてる。
真面目に毎日を平和に過ごす事、それが僕の生き方だから。
だけどこんな時、思い知らされる。
僕は1人なんだ…って。

だから、雨は嫌いだ。
特にこんな、静かな雨は。



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