短編

えんどおぶざわーるど
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昨夜、ニュースで17才の少女が自殺したと聞いた


春の屋上は、温かくて眠りに誘われる。
俺は手摺に寄り掛かって、目を閉じた。
柔らかい風が、時折髪の毛を撫でていく。


俺にとっては尊敬に値する少女の顔を、想像してみる。
特に自殺の原因も見当たらない明るい性格だった、とアナウンサーは告げていたっけ。

…潔く、強い生涯だったね。

俺にはなんかわかる気がする。
彼女は命の重みの違いに、気付いてしまったんだ。

知ってたんだろう、許せなかったんだろう、自分の重さに。

風にさらわれていきそうな重さしかない、自己の存在に。
きっかけはあったかもしれない。
でもきっと、前から死を身近に感じてた。

だから潔く、その存在を抹消させた。


「俺も…強くなれるかなぁ」


明日、俺は彼女と同じ17になる。

「芳田(ヨシダ)」

ふと背後で声がして、俺は振り返った。
春の日差しに目を細めながら、佐々木…佐々木匡哉(ササキマサヤ)が立っていた。

「また授業ふけてここにいたのか」

そうさっそうと歩いてくる足取りは、力強い。
長身で細身なのは俺と同じなのに、儚さとは無縁な強い存在感。
太陽は俺の背中側にあるのに、俺は眩しげに目を細めて佐々木を見た。

「そっちこそ…よく来るね」

佐々木は隣に並んで空を見上げた。
唐突に口を開く。

「春っていいよな…いろんなもんが活きづいて」


そう言った横顔は、生き生きとしている。



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