短編

くすぐりっこ
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昼過ぎ、寝ぼけ半分でキッチンに立つ。
ほんわかした卵焼きとベーコンを炒めた料理は、俺の得意料理。
…簡単だしね。

「お〜はよ♪」

寝起き特有の、低い声で俺の背後に立つ男。
テンションだけはやたら高い。

「うわ、うまそう」
「邪魔、どいて。ねぼすけ野郎」

さっき起きた自分は棚にあげて辛辣に言ってやるも、全く応えていない様子で反論してきた。

「仕方ないだろ。そのくらい夜が激しかったんだから」

そうにやにやしながらつん、と脇腹をつつかれて、俺は身体をよじる。

「…ばか、くすぐったい!」

俺の反応に気をよくしたのかこの男、さらに嬉しそうに笑う。

「そういえば昔からおまえくすぐったがりだったよなぁ…覚えてるか?くすぐりっこ」
「子供の時だろ。おまえ何かとあの遊びしたがったじゃん」

俺は料理を炒めながらそっけなく答えてやる。
まだこいつも俺も純粋無垢だった頃、よくやった遊び。
極度にくすぐったがりな俺は、身体を捩らせて転げ回ったもんだ。

「あれさ、お前のもがく姿見たくてやってたんだよね。あの頃Sに目覚めたんだなぁ…きっと」

思わず菜箸を落としそうになる。

…前言撤回。
こいつは、あの頃すでに不純なガキだったらしい。
唖然としてる俺をお構いなしに、肩に顎を乗せて聞いてきた。




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