短編

傷心後、食堂にて。
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あ、まただ。



…パスタの食べ方で、目の前の2人の仲がさらに縮まったのがわかった。
俺はパスタに運ぶ手を止めて、そんな2人をまじまじと見つめてしまう。

「いっただき〜」

…と、いきなり脇からフォークが俺の皿に遠慮なく飛び込んで来た。

「おい、何やってんだよテメェは」

睨みつけても、赤坂平太(アカサカヘイタ)は全く応えず、俺の皿にあったホウレン草をうまそうにぱくつきやがった。
今ではもう見慣れた、こいつの明るい茶色の髪すらむかついてくる。

「だって仕方ないしょ。南にスキがあったんだし」
「……あのな。出せ」
「もう無理。飲んだ」

ただでさえ機嫌が悪いのに、俺が最後に残すほど好きなホウレン草食べやがって。
視線に殺意に近いものを込めて睨み付けてやると、目の前の2人が笑い出した。


「涼介と平太って本当いいコンビだよな」

かずや♂が笑う。

「本当〜漫才みたい」

…続いてさちこ♀。
笑顔まで似て見える2人は、付き合って2ヶ月。
どうやら順調らしい。
最初は友達だった2人がなんとなくお互い意識して、かずや♂がさちこ♀に告白して。
今では目の前で、互いの嫌いなものを食べ合う仲ってわけだ。
そりゃ隣のやたらテンション高いご友人にも、寛大になれるわけがない。
というより不機嫌全開。
なんでかって?
そりゃ、俺が惚れてたから。

目の前で幸せそうに笑う、かずやの方に。




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