短編
□エイプリルフールの誤算
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今年もついにやってきた。
俺にとっては大イベントになりつつある、3年目。
4月1日。
エイプリルフール。
教室に入ると、真っ先にターゲットである人物へ向かう。
「おはよっ。板津」
「…はよ」
板津 時(イタヅトキ)。
俺を見た途端、警戒モードを出している長身の男。
…今日は、この男の為にある。
「板津。なぁ…板津クン」
「……なんだ」
現国の教師が熱を出して授業が自習時間となったのを幸いに、俺は後の席から板津を呼ぶ。
素っ気なく振り返る視線は、冷たい。
たぶん、わかってるんだろうなぁ…また俺が今年も騙そうって企んでる事。
中学も一緒だった板津とは、クラスも違ってほとんど話した事なかった。
ここの高校に入って同じクラスになって、俺…上田 瞬人(ウエダハヤト)と前後の席になったのがはじまりだった。
1年目の春。
長身、無愛想だけどはっきり言いたい事はいう性格。
誰にも媚びない。女にも男にもモテる。
…知れば知るほど、俺のコンプレックスくすぐりまくり。
だから、たまたま思いついたのが4月1日。
美術に変更と指示が出た休み時間、授業ぎりぎり前まで隣のクラスにいた板津に言ってあげた。
「体育に変更だから、着替えて校庭らしいぜ」
「…わかった。さんきゅ」
いつもは憎まれ口を叩く俺が、優しく声かけたもんだからあいつは戸惑い…
騙された。