短編

エイプリルフールの誤算
1ページ/4ページ



今年もついにやってきた。
俺にとっては大イベントになりつつある、3年目。


4月1日。
エイプリルフール。


教室に入ると、真っ先にターゲットである人物へ向かう。

「おはよっ。板津」
「…はよ」


板津 時(イタヅトキ)。
俺を見た途端、警戒モードを出している長身の男。

…今日は、この男の為にある。


「板津。なぁ…板津クン」
「……なんだ」

現国の教師が熱を出して授業が自習時間となったのを幸いに、俺は後の席から板津を呼ぶ。
素っ気なく振り返る視線は、冷たい。
たぶん、わかってるんだろうなぁ…また俺が今年も騙そうって企んでる事。

中学も一緒だった板津とは、クラスも違ってほとんど話した事なかった。
ここの高校に入って同じクラスになって、俺…上田 瞬人(ウエダハヤト)と前後の席になったのがはじまりだった。

1年目の春。
長身、無愛想だけどはっきり言いたい事はいう性格。
誰にも媚びない。女にも男にもモテる。
…知れば知るほど、俺のコンプレックスくすぐりまくり。
だから、たまたま思いついたのが4月1日。
美術に変更と指示が出た休み時間、授業ぎりぎり前まで隣のクラスにいた板津に言ってあげた。

「体育に変更だから、着替えて校庭らしいぜ」
「…わかった。さんきゅ」

いつもは憎まれ口を叩く俺が、優しく声かけたもんだからあいつは戸惑い…
騙された。



次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ