短編

さよなら、ばいばい
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「なにしてるんだ?」


玄関には、男ものの靴が3足。

1足目は裸で目を伏せてる俺、壱也(イチヤ)。
それから2足目は、裸で素知らぬ顔してベットの端に腰掛けている、セイジの。
それから、後から来た3足目は俺の…恋人。


早川さんはいつものように仕事後、そのまま俺の所へ寄ったんだろう、スーツにトレンチコートを羽織っている。

「なに…してるんだ?」

落ち着いた、けれど厳しい口調でまた問い掛けてくる。
まだ情事の余韻か、熱くて気怠い身体。
俺は小さく息を吐くと、彼を見上げた。

いつも自分に向ける優し気な笑顔はなく、傷ついたように眉を寄せて、俺を見つめている。
一瞬ずきり、と胸が痛んだ。
それでも俺は、皮肉な笑みを浮かべた。

「見たまんまだよ」

後ろでは衣服のこすれる音と、セイジの舌打ち。
こんなん聞いてねえし、と独り言も聞こえてきた。

「俺行くわ」
「…ああ」
「待つんだ!」

セイジとのやり取りを制すように、早川さんが呼び止める。

「君、壱也のなんなんだ?」
「…何でもないっス」

背後でさらりと答える声。

「何でもないって事ないだろう」
「ないよ。ただの肉体関係」

ジーンズを履きながら、俺が代わりに答える。



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