おさななじみ

おさななじみ《2》
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直人は闘っていた。

黒板では古典の先生が、眠気に誘う言葉をしきりに発している。
直人は必死に何度めかの欠伸を噛み殺した。
ここ最近、眠くて仕方ないのだ。

眠れないからかなぁ…あの後。

2回目に慎とああいうコトをしてから、2週間。
密やかにあの行為は続けられている。
とはいえ、苦痛である最後までは1回目以来はないのだが。
登下校時、学校内では、何事もないようないつもの慎がいる。
それについ安心して流されていると、言われるのだ。

『今日来るだろ?』

いつもの口調で、日常的な会話の中で直人を誘う。
なのに慎の部屋では、全く雰囲気が激変する。
抵抗する猶予もないまま極限まで焦らし、追い上げられる。
もう何度慎の手や口で…

…目ぇ覚めてきた。

あの行為を思い出すと、身体が熱くなる。
思い出さないようにしてるのに、ふとした時に蘇ってしまうのだ。
直人は体勢を立て直して、授業に集中する道を選んだ。



「な・お・ちゃんっ」

授業を終えて大きく伸びをした直人は、自分を呼ぶ声にドアを振り返る。
教室のドア口で、愛がひょっこり顔を出していた。

「あれ、小笠原。どした?」

近寄ると、愛は拝むように両手をついた。

「お願い!英語の教科書貸して!それとノート!あたし今日あたるの…!」
「英語…て、俺んとこ今日入ってないんだけど。急きょ数学に変更とかって」

愛が途端に青ざめる。

「…嘘。全滅かも……うちのクラス1番遅れてるらしいから、借りれば問題の答えもわかって楽勝と思ってたのに…!」

5クラスのうち、他のの友人にはすでにあたったらしい愛は、大きな目をうるうるさせる。

「英語の菅原…コワイもんなぁ」
「この前もクラスで教科書忘れた子、すごい嫌み言われてたんだよぉ…」

愛は半泣き状態だった。
直人にとって、小動物を思い出させるこの目には弱い。

「う〜ん……あ!」
「なおちゃん?」
「慎ちゃんならあるかも」

直人は思い付いて、声をあげる。

「5組ならもうあたったよ。今日は授業ないって…」
「大丈夫!いこっ!」

言うが早いか、愛を引っ張って廊下を早足で歩く。
英語論文も近いし、あの慎なら持ってるはずだと直人は確信していた。
不安そうな愛をひっぱりつつ、5組のドアを覗きこんだ。




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