RUN!
□season1
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「牧伸吾(マキシンゴ)です。走りには絶対の自信があります」
はっきりした声と発言に、一瞬空気が止まった気がした。
そこには俺、高見蛍(タカミケイ)も含まれている。
1才下とはいえ、中学校あがりたて、という幼い感じの少年。
本入部が決まった後輩達の自己紹介は、みんな萎縮していた。
そりゃあそうだと思う。
2年、3年の先輩部員に囲まれて話すなんて、なかなか平常ではいられない。
俺も1年前、変に緊張して何を言ったか覚えてないし。
それに比べて、彼の発言は堂々としていた。
いや、しすぎている…と言った方がいいかもしれない。
ひやりとするものを感じた。
現に予想通り、沈黙の後ざわめきが起きた。
周りに視線を送ると、やはり反応はかんばしくない。
俺と同じ2年の奴等はまだしも、3年の先輩達には明らかに不穏な空気ができている。
睨むような視線や、嘲笑を浮かべる部員達にひと通り目をやり、もう1度彼を見た。
キリリとした吊り目がちの瞳とかち合った。
憶する事のない視線に、何か感じるものがあった。
それが、俺と牧の始まり
…いろんな意味での。