銀魂

□別たれる事無かれ
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「土方さんっ下がりなせェ!」
だが、寸前で沖田に引き止められ、慌てて立ち止まる。
すると目の前に、巨大なドラム缶が落ちてきていた。思わず土方は青くなる。
「行きやすぜィ」
素早くあたりを見回した沖田が、土方に言ってスッと中へ入って行った。
土方も沖田の後に続き、中にいた浪士達を斬り捨てていく。
二人の体はすでに返り血に染まり、深紅の鬼と化していた。
「総悟っ下がれ!」
「はいよっ!」
唐突に、土方が鋭く叫ぶ。
すぐさま沖田が下がると、さっきまでいた場所に銃弾がめり込む。
そのまま数歩後退し、足元に落ちていた金属片を撃ってきた男へと投げ付けた。
「がはっ・・・!」
見事に顔面に当たった金属片が、噴き出された鼻血とともに下に落下する。
落下した金属片は、下で銃を構えていた男の脳天を直撃して地面に落ちた。
「運がいいみたいでさァ」
小さく笑った沖田は、大勢の敵に囲まれて悪戦苦闘する土方へと駆け寄り、
沖田が近づいている事に気付いていなかった攘夷浪士を切り倒す。
僅かに崩れた浪士たちの包囲網の隙間から覗く土方と、ほんの一瞬だけ目が合ったその瞬間、
二人は不敵な笑みを互いに交し合った。
「土方さん、死なねぇで下せェよ?」
笑みを浮かべていつもの調子で言う沖田に、土方も笑みを返す。
「ふん・・・お前こそ、死ぬなよ?」
「わかってまさァ」
「俺だって、わかってる。」

『絶対に、死んでなんかやらねぇ』

二人の鬼神は向かってくる敵を、まるで喰らうかのように切り殺していく。
その後ろでは、ようやく奥まで入ってきた近藤達が同じように敵を屠っていた。
辺りは血の深紅一色に染まっていき、地面は息絶えた浪士達の屍で彩られていく。
土方と沖田はもちろん、他の隊士達も深紅の衣装を纏っていた。
近藤の振るった刀が男の首を撥ね、その隣にいた男の腕を切り落とした。
鈍く湿った音と共に、首と腕が地面に落下して血を飛ばした。
吹き上がる鮮血に染まりながら、近藤は小さく舌打ちした。
「くそっ・・・キリがない・・・!」
一体どれだけの浪士がここに集まっていたのか、相手は斬っても斬っても沸いてくる。
新たに死体を増やしながら、近藤は山崎のいる方へと駆け寄っていく。
山崎は、十数人の浪士に囲まれていた。
すぐ近くまで寄ったところで、山崎の前方に、見慣れた物が落ちているのに気が付いた。
このままでは、山崎が餌食になる。
そう考えるよりも早く、言葉が飛んでいた。
「山崎っ退がれ!!」
「は・・・はいよっ!!」
近藤に言われ、山崎は慌てて後退する。ふと視線を足元に向けて見れば、
そこにはいつ設置されたのか、地雷がちょこんと置かれていた。
周りを見渡してみると、この一個だけのようだった。ホッと溜息をついて近藤のいる場所へ向かう。
背を向けて走り出した山崎に気付いた浪士たちが、咄嗟にその背を追おうと走り出した。
次の瞬間。

ドオォォォォォンッ・・・・・!!

あろう事か、浪士たちは仲間の仕掛けた地雷を踏んで吹き飛んだ。
バラバラと赤い花弁のように舞い落ちてくる肉片と血にまみれ、山崎は天井を見上げる。
ちょうど近くに来ていた沖田の白い肌を、深紅の雨が包み込んでいった。
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