銀魂

□拍手御礼
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拍手掲載期間
2010/02〜2010/04

―「いつも」―

夕焼けに染まった空を眺める男が一人。
さら、と銀色の髪が風に遊ぶ。
ふわりと甘い香りが髪から漂った。
閑散とした丘には、銀髪の男の座った姿しかない。


いつも傍に居た少女は父と兄と共に生まれ育った星へ帰り、

いつも傍に居た少年は姉と共に道場を復活させ繁盛させている。

いつもガミガミと口煩かった老女は何時の間にか姿を消し、

いつも馬鹿にした態度で煙草を吸っていた女も共に消えていた。

いつも攘夷だと騒いでいた長髪は今は田舎でひっそりと生活しているし、

いつも長髪に着いて歩いていたペンギンもどきも一緒に田舎で生活している。

いつも幕府をぶっ壊すなんて言っていた隻眼は今はもう土に還った頃だろう。

いつも空を、宇宙を飛び回っていた天パ男は今も飛び回っているが、

正直何処に居るのか何をしているのか、それこそ生きているのかも分らない。


皆、皆、変わってしまった。


自身が日に日に少しずつ衰えていく感覚からも、
変化を感じざるを得なかった。

少しずつ暗んでくる空を眺めて、溜息を吐いた。


いつも何だかんだで助けてくれた薄茶の髪の男は少し前に病に臥し治る見込みは無く、

いつも鉢合わせていたニコ中男は田舎に篭り、看病に付きっ切りだ。

いつもストーカー行為に走っていた男も今や一児の父。


世の中、何が起こるか分らないものである。

いつもひっそりと暗躍していた地味な男は今は別の組織で活躍しているようだ。

いつも草木を愛でていた隣人は花屋を拡大して人気を博している。

いつもジャンプを取り合っていた忍は先の大戦で命を落としたし、

いつも笑顔で接客していたカラクリ人形も先の大戦で修復不可能になった。

いつも音楽を聴いていたサングラス男は今も芸能界で何かと話題になっていて、

いつも突然布団に潜り込んでいた女忍は、今は遠く異国の地で大道芸をやっているらしい。

いつも変態を連れていた美少女は今も道場で立派に当主を務めている。

いつもカラクリを作っては楽しそうにしていた爺さんは少し前に静かに息を引き取った。


どんどん、どんどん、止めようも無く時間は流れていく。
流れ行く川のように、止め処なく。
冷たい風が、ふわりと優しく吹き抜けた。

「あーあ・・・皆、変わっちまったなァ・・・。」

男のやる気のない声が、冷えてきた空気を震わせて消えていった。
何時の間にやら、空は暗くなって星が瞬いていた。
のんびりと立ち上がって、尻に付いた葉を払う。
大きく一つ伸びをして、ほう、と一つ溜息を吐いた。

「・・・帰るか。」

誰にともなくぼそりと呟いて、ふらりと丘を立ち去った。

「いつも、いつも、俺は置いてけぼりだよなァ・・・。」

昔とは違う、何処か力無い歩を進めながら、のんびりと呟く。
町は随分様変わりしていて、子供は大分減った。
人気のない町を歩きながら、柄にも無く感傷に浸る。

「親に始まり、先生に、攘夷志士の連中・・・
今となっちゃァ『仲間』も皆俺を置いて進んでやがる。」

立ち止まり、自嘲気味に嗤う。
ふと気が付けば、自宅まで戻ってきていた。
冷たい冷え切った引き戸を開けて、中に入る。
扉を閉める音が、やけに大きく聞こえた。

のそのそとリビングへ向かう。

と。

「おい、万事屋。こんな時間までどこ行ってたんだよ!」
「そうじゃそうじゃ!何時間待ったと思っちゅうちや!」

随分と懐かしい、聞きなれた声が聞こえてきた。

「え?」

視線を上げれば、見慣れたサングラスのオッサンと、サングラスの天パ。
二人して人の家で勝手に飲み会を始めていた。

「ちょっと、お前等何してんの?ここ俺んちだからね?
つーかどうやって入ったんだよ。ピッキングかコノヤロー。」

ぼりぼりと頭を掻きながらその二人の輪に混ざりつつぼやく。
二人は満面の笑みを浮かべた。

「なに、新しい仕事も落ち着いてきたからな。挨拶しようと思ってよ!」
「わしは暇じゃったき、何とな〜く遊びに来ただけじゃ。アッハッハッハ!」

二人して馬鹿みたいに笑っている。
どうやらかなり酒が入っているようだ。
溜息を吐きながら、俺にも寄越せと手を差し出す。
オッサンから酒を満たした杯を手渡されて、一気に飲み干す。
何とも言えない熱が喉を通り抜けていった。

「・・・良い酒だ。」
「そりゃそうだ。高ェ酒買ってきたみてェだし。」
「ほがな高くも無いと思うけどのぉ。」
「そりゃーお前の感覚がズレてんだよ。全く、これだからボンボンは。」

三人して床に座り込んで、月明かりだけを頼りに杯を重ねる。
暗いのも何のその、わいわいと楽しく騒ぐ。
やがて、先に飲んでいた二人は床に大の字になって寝始めた。

「ったく・・・人んち来て騒いで、挙句は先に寝るって・・・
どんな教育受けて育ってきたんだよ、まったく。」

溜息を吐いて二人を器用に避けながら窓へ近付く。
窓枠に座って街並みを眺めながら、小さな杯に口を付けた。

「・・・まァ・・・偶にはいいか。」

満足気に頷いた銀時は、随分と優しい表情で二人を見下ろした。
目尻には、幾分深くなってきた皺が刻まれていた―・・・


Fin★

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あとがき。
ひっじょーに情景が分りにくくてすみませんでした。
銀さん達が大分老けてからのお話でした。←
出来るだけ名前を出さないように、が今回の目標でした。
うまくいったのかな。
いってればいいな。

お付き合いくださり有難うございました^^
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