銀魂

□曼珠沙華
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嗚呼、儚きかな曼珠沙華・・・
緋く染まりて、散り逝かん・・・

―曼珠沙華―

幾分冷たくなり始めた秋の風が、曼珠沙華の花弁を揺らして夕暮れ時の屯所を駆け抜けた。
「もう秋ですねェ・・・」
縁側にちょこんと座る総悟がそう呟いて、小さくため息をついて微笑した。
誰に言うわけでもなく、ただ小さく言って虚ろな眼で紅い花を見つめていた。
そんな総悟の後姿を非番だった土方が見つけ、その横にそっと腰を下ろした。
「お前、中にいろって何度言ったら分かるんだ」
着物姿の土方は煙草を取り出し火を点け、ふぅ、と紫煙を吐き出した。
「・・・別にいいじゃねぇですかィ。俺の勝手だろィ」
少々寒いのか、細い足を抱きこんで蹲った総悟に土方は呆れたようにため息をつく。
小さく震えながらも部屋に入ろうとせず、病んだ体に鞭打ってそこにいる総悟。
どうしてそんなに外にいたいのか、土方は理解できないわけではなかった。
「総悟・・・部屋入りたくねぇんだったらせめて上着を着ろ。」
紫煙を盛大に吐き出して灰を落とし、普段どおりぶっきら棒にそう言ってやる。
総悟は病のために普段よりもずっと白い額を、立てた膝にくっつけて縮こまっていた。
「上着取りに戻るのも、勿体ねぇんでさァ・・・放っといて下せぇ」
カタカタと細い体を震わせながら、顔を上げてまた紅い花に眼を向ける。
屯所の塀に沿って揺れる、紅い花。彼岸を過ぎれば散ってしまう、儚い花。
総悟はその美しい花を見つめ、寂しげに膝を抱いていた。
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