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□人魚姫の恋
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バスルームから聞こえていたシャワーの音が止んでしばらく経っても、ちぎはなかなか戻って来なかった。
きっと今日も下着が用意されていない理由を、ぐるぐると考え込んでいるんだろう。





初めはほんのイタズラ心だった。
ぐっちゃんに似合うと思って買った下着。
着てみて欲しいと頼んだら

「こんなフリフリしたやつ、やだよ」

とあっさり断られた。



「ちぎ、これ、ちぎのために用意したんだけど」

ある日、お風呂あがりのちぎにその下着を差し出すと、ちぎはそれをぎゅっと抱き締めてこの上なく幸せそうに微笑んだ。
自分は身代わりだってことを、分かっていながら。





奔放で気分屋なぐっちゃんは、決して私の思い通りにはなってくれなかった。
けれどちぎは違う。
私の用意した下着を身につけて、私の望むままに振る舞ってくれる。
いつだって健気に笑って。
そうしていつしか私は、ちぎのいない夜を恐れるようになった。




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