真夜中の闇、穢れなき月の光
□第零訓 ある春の日の邂逅
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何年も前。兄と幼馴染み達が就職する事になり、離れ離れになる事になった。
女だからと、僕だけは入れてもらえなかった。その代わり就職先の偉い人に、18歳までは自分ののところにいなさいと言われた。
厳しい訓練に耐えて、強くなって。そうしたら、その時は、僕も入れてくれると。
―――絶対に、俺は千月を置いていかないから
常に死と隣り合わせの仕事だと聞かされ、もう会えないかもしれないと泣きじゃくった僕の髪を、優しく撫でた幼馴染み。
両親を亡くしている僕は、もう人の死を見たくなかった。彼はそれを知っていたから、だからこそ笑った。
また会えるからって。手を握り合って、抱きしめ合って、互いの姿を目に焼き付けて、笑顔で別れた。