中編・短編集

□遠い
1ページ/6ページ




 prrr…

『もしもし?』

「黒狼ですか?…愛流です」

『! …どうした?お前から電話なんて、珍しいな』

 電話の向こう側で、彼が物を落とした音がした。

 …ふ、動揺しすぎでしょう。

 嘘が苦手なところは、やっぱり変わらないのですね。

 ……。

「…黒狼」

『うん?』

「何か変わったこと、ありましたか?」

 私と離れて、何か。

 例えば、…周りの環境とか。

『環境?うーん、相変わらずこっちは暑いけど…そっちはいま冬か?』

「…そうですね。もうすぐクリスマス、ですし」

 貴方と離れて、3年目のクリスマス。

 今年は、親友とも呼べる友人とすごすんですよ。

『クリスマス…そっか、友達か。お前いっつも一人でいたのになぁ』

「煩いのは苦手なんです。彼は静かな方ですしね」

『そっかぁ…良かったな』

 そう、ですねぇ。

 貴方がいない冬は、とても寒いのですよ。

 それは、友人ができたからといって変わらないのですが。

『そうか、友達かー…』

「……」

『……』

 沈黙が、空気を冷えさせる。

 あぁ、むかしは心地良かったのに。

 どうして。

 …なんて、わかりきっているけど。



.
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ