いただきものor捧げもの

□まーちゃんに
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まーちゃん誕生日






「目…かゆい」

ぐしぐしと真帆が目元をこする

エルはその手首を掴んでそれを止めた

「擦ンな。赤くなンぞ」

「んー…」

「目薬させよ。ほら、」

エルはポケットから小さな目薬を取り出し、真帆に差し出した

中の液体は満タンに入っており、まだ未使用のようだ

「無理」

「ァあ?ささなきゃ どォにもなンねェぞ」

「いやだって、怖いじゃん?目薬」

「…いや怖くねェけど」

「いやいやいや!目に異物を入れるなど言語道断!!」キリッ

「異物って。 液体だぜ?目とか洗うだろ」

「それとこれとは別」

そんな会話をして、そうしてエルはため息をついた

「自分でやるか俺にやられるか。どっちか選べ」

「目薬ささない」

「どっちかっつっただろ。二択だ。ささない選択肢はねェ」

「目薬なんかささなくても問題ないし、我慢するし」

「我慢できねェだろ、どォせ」

そんなことを言い、エルはまたため息をついてその場に座った

そうして、自分の膝をぽんぽんと叩いて真帆を見上げる

「ほら、こい」

「え、なになに。怖、きもっ」

「てめェ…殴るぞ」

イイからこい。

そう言われて、真帆は渋々エルの膝に頭を乗せて横になった

俗に言う膝枕の体勢である

きゅ、とエルが目薬のキャップを開ける

「…おい、目ェ開けろ」

「開けてる」

「いや開いてねェよ。完全に閉じてンだろ それ」

ほら 開けろ。

と、言葉遣いとは裏腹に、優しい手つきでメガネを外され瞼を指で開けられる

が、

「…抵抗すンなよ」

「シテナイヨ」

「即バレる嘘つくな。マジで目開けろって、愉快なことになってンぜ」

「うー、やだーっ」

「この野郎ォ…」

「野郎じゃないし」

「開けねェと口ン中に目薬入れンぞ」

「……」

「オイこら、黙ンな」

目も口も閉ざした真帆の額を小突く

痛かったのか諦めたのか、拗ねた様子で睨みつけてきた真帆をエルは見返した

「っ…」

赤い、緋い、深紅の目

合わせてしまったその色に、目を奪われる

と、冷たい感触が真帆の目に入った

「っ〜!?」

がばっと起き上がり、片目を押さえる

頭をぶつけかけたが、エルが首を引いたので免れた

「クールタイプ、っつーの? 冷たくてキモチーだろ?」

「スースーする…!!」

にやにやと笑うエル

どう見ても真帆の反応を楽しんでいた

「もう片方もするか?」

「だが断る。絶対に!しない!!」

「クククッ…」

笑い、そうしてエルは真帆の額にキスをした

「可愛い」

「……なにさ、いきなり」

「言わねェだけでいつも思ってる。…なァ」

ぎゅ、とエルは真帆を抱き締めた

お互いの表情は見えないが、どこか悲しい声をしていたから真帆は彼の背に手をまわした

「こういうフツーがさ、ずっと続けばイイのにな」

「…エル?」

「…フッ、何でもねェよ。ほら、もう片方もすンぞ」

「話逸れたと思ったのに!」

「ばァーか」クスクス

結局、真帆は両目に目薬(クールタイプ)をさされるのだった

そのあと目薬を貰ったが、それから一度も使われていないらしい






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