いただきものor捧げもの

□柩様
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てのひら ※エル×楊






「エルさん どーんっ!」

『うォ、…楊。ビックリしただろォが、馬鹿』

「ふへ、ごめんなさーい」エヘヘ

エルの腰に抱きついた楊は、にへらと笑う。

口調は荒いが、優しい彼が怒っていないのを楊はよく知っていた。

何故なら、常習犯だからだ。

そんな彼女に、エルはいつもの無表情を緩めて小さく笑う。

その穏やかな笑顔に、楊は胸が高鳴るのを自覚した。

「え、ええっと…」

何だか気まずくなり、楊はエルからぱっと離れ両手をあげる。

首をかしげたエルは、ふと思いたち、ひょいと楊の左手首を掴んだ。

「ぅえい!?」

『うわ、細ェ…』

エルも男にしては細いが、やはり男と女では少し違いがある。

エルは普段触れることのない異性の手を、興味深げに観察した。

手を掴まれた楊はというと、いきなりのことに口をぱくぱくと開閉している。

『やわらかい、ッつーか…やッぱ男とは違うンか』

「ぇぇぇえ、エルさっ…!?」

『細ェー…』

完全無視である。

だがエル本人としては、スルーしている気はまったくなかった。
  
彼の悪い癖で、考え込むと周りが見えなくなるのだ。

故に、エルには楊の声が聞こえていない。

エルが飽きるか我に返るまで、楊の左手は好きなようにされるしかないのである。

『ンー…うわ、ちッせェ』

「っ…!」

手首を掴んでいたエルの手は、いつの間にか楊の手に重ねられていた。

エルの冷たい手の温度に、楊は体温があがっていくのを感じた。

もう片方の手は、驚きのあまり上にあげられたままだ。

「ぇ、エルさ、んっ…!///」

『ンー?』

明らかに返されている だけ の返事に、楊はもはや涙目である。

『小せェ…』

するりとエルの指が楊の指の間に入り、ぎゅっと手が握られる。

のばされたままの楊の指は、緊張のあまり小刻みに震えてる。

その顔は真っ赤で、いつもの楊の様子など欠片もない。

完全にエルのペースだった。

『ン…、あ』

「え、?」

エルの薄い唇が開かれ、楊の指に吸い寄せられるように近付いた。

人差し指の根元を掴み、その一本の指だけを口にしようとするエル。

中指がエルの唇に触れた瞬間、呆然としていた楊は我に返った。

「ぅわぁあああああああああ!!?!?!」

『ッ、』

思わずあげっぱなしだった右手でエルに平手打ちをする。

はっ、とエルが我に返った。

白い頬には綺麗に赤く手形がついている。

「ご、ごめんなさいエルさん!っていうか何するんですかぁあああああ!!!?///」

『痛ェ……悪ィ、俺今何かしたか? 何も考えてなかッた』

「したよしましたよ! 何かとは恥ずかしくて言えないけどしましたよ!!///」

『ンー…』

ぎゃーぎゃーと騒ぐ楊に、エルは首を傾げ…ぽん、と彼女の頭に手をのせた。

そうして、穏やかな手つきで撫でる。

『…ごめンな?』

「う、……いい、ですけど…」

『Thank you.』ナデナデ

「うぅ〜…ズルいよ……///」ボソッ








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