いただきものor捧げもの

□榊原璃魔様
1ページ/1ページ

デフォルメ

相互リンク記念作品。
【ジャンル】Sound Horizon
 幸せMoira。





「ミーシャ」
 透き通った湖。エレフが入れば腰くらいの浅さだが、彼の双子の妹が入ればみぞおちまで浸かってしまう。
「風邪ひくよ」
「大丈夫! エレフもおいでよ!」
 湖の近くの大木に背を預け座っているエレフに、ミーシャは高い位置に結い上げた髪を揺らしながら笑った。
 今は本格的な夏が終わった初秋。そして、今日は暑くない日だ。むしろ肌寒い。この湖は年中温かいので、その面で風邪をひく心配はない。だが−−。
「全く……。下着で湖に入る女がいるか……」
 ミーシャは、涼しげな普段のギリシャ服を脱ぎ捨て、キャミソールとドロワーズだけ(キャミソールは彼女のものだが、ドロワーズは悪魔と契りし少女にいただいた)の姿になり、湖で泳いだり、小さな魚と遊んでいる。
「ミーシャ」
「エレフ! 早くおいでよ!」
 そろそろ出ないと本当に風邪をひく。十数分遊ばせ、エレフはミーシャをひっぱり上げようと湖のほとりに座った。
「ほら」
「やーだっ」
「ちょ、うわ!」
 エレフが差し出した手は頑固なミーシャに引っ張られ、体ごと湖に突っ込む。
「ミーシャ!」
「うふふ、エレフ引きずり成功っ!」
 自分が湖に引き込まれたことよりも、彼女の健康を気にするシスコンは、湖を自由に泳ぎ回るミーシャを追いかける。
 紫混じりの銀髪が水面に揺れた。
「−−つかまえた」
「むー」
 さすがに疲れたのか、泳ぐスピードが落ちたミーシャをがしりと両腕で抱きしめ、エレフは彼女の動きを封じる。赤い革紐で結わえられた銀髪をほどき、美しいまっすぐな髪が水面を彩った。
「……ねえ、ミーシャ」
「なあに?」
「綺麗だね」
「そうね」
 エレフの発した綺麗は、ミーシャに向けられてだったが、彼女はそんなことを知るよしもない。
「大好き」
「私もよ、エレフ」
 双子でありがちといえばそうだが、お互いに愛を囁きあう。
「ずっと一緒にいようね」
「うん、いようね」


 −−死がふたりを別つまで。






.
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ