とある魔術の禁書目録
□裏の裏ははたして
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『心配しなくてイイ』
手を止め背を向けた少年に、青年は言う
少年も青年も彼らがいる部屋も、同じように白かった
色のない少女だけが、鮮やかな色をしている
『オマエの罪は__』
青年が少女に近付き、何事かを囁いた
安全な高所で彼らを見下ろす研究者が言う
「まだ実験は終わっていないよ。 対象が機能停止していないだろう?」
「…機能停止?」
少女が腕をゆっくりとあげた
その手には、銃
少年は少女に背を向けたまま、研究者と青年の声に耳を傾ける
『__この俺が償ってやろう』
銃声
何かが作動する鋭い音
ぶちゃ、と銃弾が肉に食い込む
血が滲む
少年ではなく、少女の脇腹は血に濡れていた
「…こォいうことかよ」
『ダイジョーブ』
何かを呟き、目を見開いたまま倒れる少女
青年は少女を受け止め、抱き上げた
『オマエは今確かに、人を殺した。 でもこれは、実験なンだ』
「…何が言いてェ」
『オマエにとっては、20000通りの戦闘パターンで妹達を殺す……俺にとっては、20000通りの死に方をした彼女たちを救う…実験』
上から自分たちを見下ろす研究者を見る
そうして、また口を開いた
『あいつらは、妹達を人形だというが…俺ァそうは思わねェ』
「……」
『妹達は人間で、俺たちは人殺しの実験をしてる。 …だからこその、償い』
青年の言葉は、少年には甘い毒のように思えた
テノールの声は、唄うように言う
『殺してイイよ。 俺は弱者の味方だから』
「…弱者ってのは、」
どっちのことだ?
その問いは声にはされなかった
自分の最強の力を信じ、少年は言葉にはしなかった
「……」
それが正しい道かは、わからない
それでも少年は、一方通行は、青年の手をとった
自分の目を見て話すこの男なら、少しはマシだろうと言い訳をして
『オマエの力が無敵になることを期待してるよ』
そう言って、黒に赤が浮かぶ目を細めて青年は嗤った