私の恋物語
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「「えぇーーっ!!?」」
「二人とも声大きいよ!」
「あ、ごめんって・・・今の話本当なのひかる!」
「れいが知らない男にキスされたって!!」
「う、うん」
今は昼休み・・・いつもの仲良しメンバーでお昼を食べている最中にひかるが昨日駅で見た一部始終を友達のりえとユカに話していた。
話の中心人物のれいは学校を休んでいて話を聞くことができない。
「顔は王子様みたいだったのに性格は最悪だったよー・・れい可哀想」
「今日はショックで休んでるのかもね・・・」
「そうかも。帰りに皆でお見舞いに行こっか!」
「あ、それ賛成!」
「駅前のケーキ買って行こ!」
れいの友人たちがショックで今日休んでいるんだと思ってお見舞いに行こうと話しているときれいは家でぼーっと窓の外を見ていた。
『はぁ・・・何となく休んじゃった』
ベッドに仰向けになって窓の外に広がる青空を見つめ昔のことを思い返していた。
『あの人の香り・・・どこで?』
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そう、確かに覚えてる・・・
記憶の奥に確かにあなたは存在している。
あれは・・・私がまだ小さくて、私が母さんに捨てられる前。
公園で一人ブランコに乗っていて彼に出会った。
キィ・・・キィ・・・
「ねぇ、」
『?』
声を掛けられ首を傾げると彼は隣のブランコに乗ってきた。
「ひとりであそんでるの?」
『うん』
「おかあさんは?」
『え、と・・・』
小さい私はきっと泣きそうな顔をしていたんだろう、彼が慌てていたことを思い出す。
「ご、ごめんね!泣かないで!!」
『ないてないよ?』
私がそう言うと彼は少し困った顔をして頭を撫でながら言ってくれたっけ・・・
「泣きたいときは泣いていいんだよ」
『なきたくないもん』
「うそだよ。だって泣いてるよ?」
『ないてないよっ』
「泣いてるよ、ココが」
彼はそう言って私の胸を指差した。
『っ!』
「ぼく、あらたっていうの。きみは?」
『・・・れい』
「れい、かわいいね!」
そう言って新は笑った。
それからどんなやり取りがあったのかはっきり覚えていないけど、これだけは覚えてる。
あのときの私の家庭はぐちゃぐちゃで親の顔色を窺って行動しないと怒られた。
そんな毎日を送っている内に私は本心を隠し過ごすようになっていた。
けれど、彼は私の心を見透かしたように私の仮面を剥がした。
「ぼくの前ではむりしてわらわなくていいよ」
『むり・・してない』
「れいの泣くばしょはぼくがつくってあげる」
『・・・ほんとうに?』
「ほんとう」
『ないても、おこらない?』
「なんでおこるの?」
『ママはわたしがなくとおこる、から』
新は何も言わずに私を抱きしめると頭をよしよししてくれた。
「だいじょうぶ、おこらないよ」
その一言に私の仮面は崩れ落ちた。
『っうわぁぁあんっ!』
それから私はきっと今まで自分の中にため込んでいたものを新に吐きだしたんだと思う。
泣きながら話す私の頭を撫でながらずっと話を聞いていてくれた。
でも、新は用事で一時的に日本に来ただけだったからすぐにお別れしなくちゃいけなくて・・・
「泣かないで、またあえるよ!」
『う、ふぇっ・・でも、でも!』
「かならずまたあえる!れいがどこにいてもさがしてあいにいくよ!」
『ほんと?』
「うん!つぎにあったられいをぼくの――――――」
涙でくちゃくちゃの顔の私に笑顔を見せ新は私にプレゼントをくれた。
可愛いプラスチックでできたおもちゃの指輪。
それを私に渡すと自分も色違いを持ってるって笑って見せてくれた。
そして彼とは別れたんだ。昨日の”彼”はきっとあの時の”彼”。
私に仮面をしなくていい場所をくれた大切な人だ。
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