日溜まり

□日溜まり  2つ
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   〜瑚蝶視点〜
 黄緑色の長い髪を三つ編みにして、狐のお面でお顔を隠された仮面様という……失礼ですが、おかしなお方と一緒に、新聞部の取材を終えて寮の方へと向かっております。

 「瑚蝶さぁ、その長い髪結びなよ。春っていっても暑いでしょ?」

 気遣っていただいたのが嬉しかった。

 「近々、切ろうと思っておりますので。お気遣いありがとうございます」
 「切るの!?勿体ないよ!綺麗なんだから、そのまま伸ばした方がいいよ」
 「そうでしょうか?ですが、長いので切った方がいいと思ったのですが……」
 「そうだなぁ……」

 仮面様は辺りを見渡して、急に走ってどこかへ行かれてしまわれた。追いかけても良かったのですが、私は待つことにいたしました。
 それから程なくすると、小さい紙袋を手にした仮面様が戻って来られ、紙袋の中から紫色の結い紐を出された。

 「この先にある売店で結い紐が売ってあったことを思い出してね。僕と色違いで悪いけど使ってくれたら嬉しいな」
 「……私には勿体ないものでございます。仮面様がお使いされた方がこの結い紐も喜ばれるでしょう」

 嬉しくて嬉しくて仕方ない。けど、私のようなものには勿体ない。
 失礼とは思っていても、受け取る訳にはいかず私は、仮面様に結い紐を返した。

 「瑚蝶に似合うと思って選んだものだから、瑚蝶に使われてこその結い紐だよ。瑚蝶が使わないなら、この結い紐は捨てるしかないね」
 「捨てるなんていけません!!」

 そんな、綺麗な色をした結い紐を捨てるなんて罰当たりにも程がありますよ!
 私は思わず仮面様の手から結い紐を奪い取ってしまった。

 「似合うはずだから使ってね」

 お面で表情は分かりませんが、笑われてしまったのは確かなようです。少し、恥ずかしくなって、結い紐を大事に握り締めて俯いた。
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