〜桜の木の下で〜
REBORN!
春の訪れ、校庭に植えてある桜の木は開花の時を迎えていた。
懐かしくなって、そっと木に触れながらあの日の事を思い出していた…────────
「…行っちゃうの?」
その言葉にあたしは黙って頷いた。
「ずいぶんと勝手だね、僕に何も告げないで…。」
本当に自分でもそう思った。一応付き合っているのだからこのことは言っておくべきだった。
でも言えなかった…イタリアに引っ越すなんて。
『ごめん。』
「そんな言葉は要らない。」
桜の根元に視線を落とすあたしを彼は後ろから抱きしめた。
『恭弥…』
「君が僕を放しても僕は放してあげないから。」
『…バイバイ。』
あたしは彼の腕を振り払い、そのまま走って逃げた。彼の顔を見ればきっとこの胸が押し潰されてしまう。耐えられなくなる前に…。