刑事の間

□君、かわいいね
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 「あーヤバイっ…遅れちゃう!」

 警視庁内を足早に歩く少女が一人。
 まだあどけなさの残る横顔には、焦りと不安が混じって浮かんでいた。

 「えーっと…特命二課…特命二課ぁ〜………ダメだ、完全に迷った…」

 がっくりと項垂れる少女は、長いため息を吐いていた。

 「もぉ〜……警視庁広すぎだって…何でこんなに広いのさぁ…」

 半分八つ当たりのようにそうぼやく少女の背に、遠慮がちに声が掛かる。

 「…あのー…?」
 「へっ!?」

 驚いて振り返ると、セミロングの女性が小首を傾げて此方を窺っていた。
 結構キレイな容姿のその女性は、困ったような笑顔を浮かべている。
 少女は我に返ると、早口で捲くし立てた。

 「うわわわっすみません邪魔でしたか!?
 そうですよね廊下の真ん中で突っ立ってるなんて邪魔以外の何者でもないですよね!!」

 ホントすみませんでした…!!
 ささっと廊下の端に移動すると、女性に向かって勢い良く頭を下げる。
 そんな少女に慌てて首を振ると、女性は口を開いた。

 「あ、ううん違うの。何か困ってるみたいだったから、声掛けたんだけど」

 ね、頭上げて?
 優しく促されて、恐る恐る顔を上げる。

 「それで、警視庁に何か用事かな?」

 女性は両手を膝に当てて屈み、少女と視線を合わせた。
 少女は大きな目をパチクリさせて、コクコクと頷く。

 「…あっはい!…あのぉ、特命二課に行きたいんですけど、途中で迷っちゃって…」

 今度は女性が目をパチクリさせる番だ。

 「え、二課に?……誰かの妹さん?お弁当でも届けに来たのかな?」
 「え?」

 二人して不思議そうに顔を見合わせていると、女性が気を取り直し、ニコッと笑顔を浮かべて身体を起こした。

 「…ま、良いか。
 それじゃ私と一緒においで?二課に連れて行ってあげるから」
 「え、良いんですか?ありがとうございます!」

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