短編1
□そうして僕は本当に一人になった。
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目の前に浮かんだ白い首筋に咬みついてやりたいと思った。
でもソレをすれば致命傷になるのは確実で(手加減なんてできそうに、ない)大人しくじっと見つめるだけ。
振り返った貴女は「恭弥、そんなに食べたいなら冷蔵庫にあるよ」っとアイスクリームを片手に見当違いな台詞を吐いた。
「いつも見当違いな台詞を吐くね」そう言った恭弥に私は、は?っと間抜けな顔をするしかない。どこか寂しそうな、恭弥の様子を私は気付かない振りをした(そう、いつだって気付いてはいけない)
「何でいるわけ?」そう小さく呟いた言葉に私は苦笑いを浮かべた。
「いたら悪い?」辛いのは僕のはずなのに貴女が辛そうにするのは許せない。またテレビに目を向けた彼女の白い首に両手を添えた。
「恭弥?」
本当は気付いてるくせに、気付かないふりをするのは無言の拒絶。わかっているから僕は手も足も出ない。
「結婚おめでとう」
そうして僕は本当に一人になった。
"お願いだから今は振り返らないでね、姉さん"と声がした(気がした)
"ごめんね、恭弥"と声がした(気がした)