◆朱の書◆

□第5話:“竜”を狩る者達
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今日も元気に登校、朝は本当に気持ちいいわ。挨拶してくる後輩達に笑顔で手を振って返す。


「おい…………。」


そんな中、何故か怒気満天の表情で睨み付けてくる達兄の姿が………あたし、何かしたっけ?


「今、何時だ?」
「8時20分だけど?」


ホームルームの時間までまだあるはずだけど?


「今日が何の日か分かっているのか?」
「何の日って…………………。」


途端に血の気が引く。


「ああっ!?お庭番昇進試験!?」


神木や、お父さんの事でスッカリ忘れていた!!


「馬鹿野郎!!」


思いっきり怒鳴り付ける達兄。


「達也、少しは落ち着け。」
「しかし!?」


雪浩先生が書類の束を持ってやってきた。今回も試験官なのだろうか?


「試験を忘れるフィオナは勿論、前日に試験の話をしていなかったお前も悪いぞ。」
「ぐっ!?そ………それは………。」


実は達兄、今回の昇進受験資格を持っていないため不参加なのだ。


「準備はしてないだろうから順番は最後に回しておいたが、あまり時間がない。はやく手続きだけでもしてこい。」
「はい!!」


私は急いで校舎へと駆け抜けた。

軽く手続きを済ませるとすぐに帰宅、戦闘準備だけして学校に戻った。


「まずは“筆記試験”から始めるぞ!!」


まずは年齢に応じた学校で教わる学力テストが二時間ほど、そして武器や魔物、魔法札の知識が問われるお庭番テストが行われた。


「お、終わった…………。」


机の上にへたりこむと、雪浩先生が声をかけてきた。


「大丈夫か?いつも“学科”がギリギリだから“実技”が厳しいんだろ?」
「でも、“学科”で落ちたことないから良いじゃない先生………。」
「昇進試験の“常連”が何言いやがる。ほら、次は“実技”だろ?」


うぅ………一蹴された………。


「でも、ま。あの“森”の修行のおかげで今回は受かる自信があるのよね。」


“根拠の無い暴言”をこの時の私は本気で思っていた。



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