◆朱の書◆

□第4話:妖精の暇潰し
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「マスター、なんか依頼ない?」
「いきなりねぇ。」


いつの間にか世間は夏真っ盛りで、フィオナも例外なく夏休みを満喫していた。


「フィオナちゃん。夏休みの宿題は終わったの?」
「終業式当日にね。」


その言葉を聞いて私はひどく顔をひきつらせているみたいだった。


「あっ、でも週一で雪浩先生が勉強見てくれるよ。」
「そう…………。」


私はホッと胸を撫で下ろした。
夏休みの宿題は長い休みでの学力の低下を防ぐ目的がある。
早く消化するのはあまり良くないのだ。


「お母さ〜ん!!」


遠くから娘が夏休みの宿題を持ちながら走ってくる。


「どったの?未宇ちん。」
「あっ!!フィー姉ちゃん!!これおしえて!!」


娘の未宇はフィオナちゃんと非常に仲がいい。まるで姉妹のように…………。


「どう?分かった?」
「うん!!ありがとうフィー姉ちゃん!!」


未宇が本日分の宿題を終え、部屋に引っ込んだ。同時に来客が来た。


「マスター。いるかい?」
「いらっしゃい。雪浩さん、それと………娘さん?」


その言葉に雪浩先生は派手にこけた。


「あははは、そんなにオッサン臭いですか?」

「あら?いい父娘に見えるわよ。なんとなく道瑠に似ているけど…………。」


そこまで言いかけて私はある可能性に思い至る。


「もしかして、道瑠とあなたの隠し子?」


その言葉にフィオナちゃんから受け取ったジュースを吹き出す女の子。


「ぶふぉ〜〜!!!ケホッ!!違う!!断じて違う!!」
「一応、道瑠の名誉の為に言っておくが彼女は道瑠の従姉妹だ。俺の娘じゃないぞ?」


慌てる女の子と冷静な雪浩さんは対称的だった。


「従姉妹の道琉(ドール)です。」
「ず………随分と年の離れた従姉妹なのね。しかも、初耳なんだけど?」


まだ娘と言われた方が納得するのは何故だろう?


「まあ、気にするなよ。今日は依頼しに来たんだ。」
「依頼?貴方ほどの実力者が?」
「勘違いしないでください。依頼人はこの子ですよ。」


ドールちゃんは真剣な表情で頷いた。


「私を“五十鈴ヶ森”へ連れて行って欲しいの。」
「「“五十鈴ヶ森”??」」


その言葉に私とフィオナちゃんは違う意味で聞き返した。
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