理屈じゃない

□何て単調でモノクロの世界
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『バトー』








短く入った電通に、バトーは少しだけ頭を上げた。声の主はイシカワだ。少しだけ厳しい声音に気付かないふりをして、バトーは何だと短く返した。

『悲観するのは、お前らしくない』
『悲観?何に対して』
『お前さんは、解り易すぎる』

ふっとイシカワが笑んだ雰囲気が伝わってきて、バトーは顔を顰める。一体いつから見ていたというのだろう。バトーは意味もなく混沌の空を見上げて、白く霧散していく自分の吐いた息を眺めた。そこに何の感慨もない。だけれど、無意識の片隅で深すぎる空に星を探した。どこにもそんなものは見つかりはしなかった。

『覗きなんざ悪趣味だぜ』
『何言ってやがる。てめぇらがサボらないように見張ってるだけじゃねぇか』
『よく言うぜ』

軽口の応酬に、バトーは微かに笑みを浮かべた。それはある意味苦笑だった。
本当に、イシカワには隠し事が出来ない。見透かされているようで、時々遣る瀬無くなるが、それでも不快でないから質が悪いと思う。バトーは視線を地上に戻して、ゆっくりと気持ちの上で瞬いた。

『終わったら、付き合えよ』
『奢りだったらいいぜ、バトー』

だからさっさと帰ってこい。
帰るべき場所があるのだとちらつかせて、イシカワは電通を切った。バトーはそれに少なからず感謝する。絶対口になど出してやらないが。
何だかトグサの前を歩くことが馬鹿らしくなって、歩調を合わせてやった。トグサはまだ気付かない。
同じ空の下、やはり身を震わせているだろう生身(といってもトグサほどではないだろうが)を想い、あとで温かい差し入れでもしてやろうと特種なことを考えながら、バトーは眼前に散った桜の花びらを眼で追った。






なんて単調で
な世界




生身って、サイトーさんのことね。
何となくイシバトっぽくなった気がしなくもない(嗤)









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