理屈じゃない

□優しさか弱さか【Tender】
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それを告げられた時、言葉よりもその瞳に戸惑った。
いつもとは違うひどく真剣なまなざし。
だから、ひどく戸惑った。
すぐにその感情を仕舞いこんだから、気付かれなかったと思うけど。



優しさか弱さか
【Tender】



ぽかぽかと春の暖かい日差しの中、忍足と芥川は屋上にいた。ちらほら他にも人がいたが、テニス部員は二人だけだった。
箸が進まなくなった弁当に蓋をして、あぐらをかいた忍足は溜め息をついた。あまり腹が空いていないのと、腹部に軽い圧迫感があるのとで食が進まない。

「なあジロー」

忍足は弁当箱を横に起き、腹部の圧迫感の原因に話しかけた。

「俺な、やっぱ思うねんけど」

返事はない。足をバタバタさせているのだから起きているとは思うのだが。忍足はまた溜め息をつく。
眠いと訴える芥川に膝を貸していたのだが、いつの間にか背中に手が回っていた。横から抱き締められる形だ。寝辛くないのだろうかと忍足は思った。

「そんなに眠いんやったら部室行って寝てた方がええんちゃうか?」

先程から芥川にこう言っているのだが、それに対し彼はんー、とかうー、とか生返事しか返していない。
その返事さえも返ってこなくなったので忍足は彼の顔を覗きこもうとしたが、失敗に終わる。頭は忍足の脇腹に押しつけられていて見えない。
暖かい陽気なのはいいが、風があまりないのでこうも密着されると暑い。

「なぁジロー、寝てもうた?」
「……起きてるC」

しばらくしてシャツに吸収されてくぐもった返事が返ってきた。

「なら聞こえてるやろ?連れてったるから部室で寝ぇ」
「……やだ」

ワンテンポ遅れて返事が返ってくるのはやはり眠いからだろう。忍足は呆れ、芥川が起きている内に移動をするのを諦めた。

「じゃあ寝るなら寝」

寝たら運べばいい。誰かに手伝って貰えれば簡単にできる。そう背中を叩いてやれば、

「……運ぶ気でしょ」

少し恨みがましい声で言われた。忍足はその通りだったので何も弁解はしなかった。

「じゃあ寝ない」

ぷい、と横を向いて、しかし抱き締める腕は解かない。忍足は苦笑する。

「……しゃあないなー、ジローは」

溜め息混じりの忍足のその言葉に芥川は忍足の顔をじっと見上げる。

「……」

しばし二人は無言で見つめ合った。風が二人の髪をくしけずる。

「……このまま午後サボってまおか」

少し伏目がちになって、そう言って悪戯っぽく共犯者に向ける笑みを浮かべる忍足に、芥川は顔を伏せて抱き締める腕に力を込めることで同意した。
忍足はぽんぽん、と芥川の背中を叩き、風に靡くふわふわした柔らかい髪を指で梳いた。



戸惑ったのはどっちか。





あまりお題クリア出来てない気が……おったりの優しさか弱さか、です。
本当は気持ちジロ忍。表記に迷った。まあベーコンレタス臭い友情大好きですから(爽やかな笑顔)

可愛いジロちゃんもヤンジロも好き。ジロちゃんは皆に愛され甘やかされ(笑)



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