捧げ物

□それは信じているが為
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交わすのは
最期の言葉なんかじゃない


*それは信じているが為*


「芦川、ダメだっそれは…!」

氷の塔がそびえ立つ、その根本で叫ぶのはワタル。

ボード状になり浮く勇者の剣の上に乗り、頂上を目指しながら叫んでいる。

「ミツルーーーー!!」

その叫びも届かず、ミツルは氷の中に閉じ込めたヒトへ杖を突き刺す。

そのヒトはミツルの分身、ミツル自身。
ワタルは認められたそれを、ミツルは認め、受け入れられなかった。

「っ……!?」

ミツルは確かにそれへ杖を刺した。しかし、それは自分自身な訳で。

自身を自身が殺す。


ほんの少し遅れてワタルがたどり着く。

「ミツルッ」

倒れ込むその体を支え、膝を滑り込ませる。剣が転がるのさえ気にしない。

「ミツルッ、ミツル!?」

力の抜けた体に触れ、ワタルは必死に呼びかける。

「……三谷?」
「やっ…死んじゃやだよっ」

大きな瞳に涙を浮かべながらワタルは言う。
ミツルはそれに力なくも答えようとする。

「何で…お前…が、泣く、ん…だよ」
「だっ…ミツ、ルがっ」

二人共、途切れ途切れになりながらも言葉を紡いでいる。
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