種の小説
□歌う
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【歌う】
彼は口ずさんでいた。
あの歌を
希望の歌を
俺が話しかけると慌てて笑う。
「何?アスラン♪」
元気そうに笑って言った。
本当は全然平気じゃないくせに笑って答える。
「キラ…無理すんな…」
「えっ…してないよ?アスラン変なの…」
そう言ってまた歌い始める。
本当は毎日夜に一人で泣いている。
それを知っている…
なのに君は一言も言おうとはしない…
嗚呼…
なんて悲しいんだ。
俺はキラを力一杯抱きしめる。
すると大きな目で驚いて俺を見つめる。
「ごめん…歌の邪魔した…」
俺はそう言ってキラを解放した。
「いいよ…」
しばらく無言の時は続いた…
「ねぇ…アスラン…ごめん…」
キラの突然の言葉に驚いた。
「何がだ?」
「ごめん…」
それしか言わなくなってしまった。
不思議に思ったアスランは手をキラの額にあてる。
すると高熱を出していた。
「アスラン…冷たくて気持ちいいね…」
そう言うとパタリと倒れた。
「キラ!!!」
倒れたキラを家と運んだ。
「ごめんなさい…」
「いいよそれより寝とけよ…」
そう言って帰ろうとすると腕を掴まれた。
「め…帰っちゃダメ…」
そう言ってキラはアスランの服の袖を離さなかった。
するとアスランは笑って頭に手を置いた。
「わかったから離して…ここにいるからさ…」
そう言って笑うと安心して手を離した。
「どうしようか…」
そう言ってベッドの横に座った。
「抱きしめて…」
キラが不意に言う。
「はぁ?」
アスランは驚いて声がうわずった。
「熱いよ…アスラン…」
「でも…」
「そんなに僕の事嫌い?」
まるで幼い子のように俺にすがった。
俺は言われるままに抱きしめた。
愛なんていらないって思ってたのに…
また愛を求めてる…
愚かだ。
自己嫌悪に陥りながらキラを抱きしめた。
「アスラン…大好きだよ」
「あぁ…」
「もう離さないで…」
「あぁ…」
俺が返事をすると安心して眠りについた。
俺はすぐに布団にキラを戻した。
そしてかかとをひるがえしまたキラの隣に座った。
あぁ…
なんで愛してしまったのだろう…
抵抗出来ない自分を戒めながらナイフを持った。
そして思いっきり自分の腕に切りつける。
生きた証を求めて…
ああ
なんて愚かな物語だ…