けんもほろろ

□伍 喪失
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病院のロビーで土方さんを待った。
迎えに来てくれると言われたので。
三人も一緒に待っててくれた。

『本当にごめんね。私のせいで怪我させちゃって。』
「今までの罰が当たっただけアル。気にすることないアル。」
「そうですよ。」
『そうなのかな…』

なんだかちょっと後ろめたい。
いや、私がどうしていいのかわからないのかもしれない。

「お前は怪我ねぇのか。」
『え、あ、はい。大丈夫です。ありがとうございました。』
「そっか。」
「あ、土方さん来ましたよ。」

入り口に土方さんが見えた。
こっちに気付き土方さんは眉を寄せた。

「帰るぞ。」
『はい。じゃぁ失礼しま…』
「え?お前大串君の女か何かなの?」
「は?おいこいつどうした。怪我しただけじゃねェの?脳みそも怪我してんですけど。」
『そうですね…私の事だけ記憶喪失みたいです。』
「…何それ。そんなんあるの?」
「お前真選組で働いてんの。」
『まぁ…。』

土方さんはもう行くぞと言い、
奴に会釈して病院を出て行った。

「よかったな。」
『そうですね。都合よく私の事だけなんて
どんだけ嫌われてたんだよとショックでしたけど。』

自嘲気味に笑うと、土方さんは頭を撫でてくれた。
言いたいことは沢山ある。
なのにそれを言い終わる前に忘れるなんて…

『悔しい…っ私もあいつのこと忘れたい!』
「…」

車は屯所に向かってゆっくり走っていた。
土方さん、ありがとう。
多分勘違いしてるかもしれないんで言っときます。

『好きなんかじゃないんですよ。』
「はいはい。」
『ちょ、本当に違いますからね?私の事嫌いな奴がさっさと忘れるのが悔しいんですよ!?』
「はいはい。」
『絶対あんな人好きになるとかありえないですから!!』

屯所に着くまで土方さんははいはいしか言わなかった。
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