けんもほろろ

□壱 出遭
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秋も過ぎたころ。

私は故郷を捨て、江戸へと上京してきた。
去年秋。
両親は結核で死んでしまった。
貧しい家だったので薬を買うお金もなく、
何一つ出来ずに両親は他界した。
そんな故郷に居場所はなく。
感染すると言われ家から出させてもらえず、
このままここで死ぬくらいなら
めいっぱい楽しんでから死にたいと
夜中村を飛び出しあてもなく歩き続けて
江戸へとやってきた。

『うわ、人が沢山!!』

江戸には見たこともない生き物。
見たこともない人の多さに驚愕した。

『…』

みんなきれいな着物を着ているな。
自分の着物を見ると、故郷を出てからずっとこの格好だ。
汚い着物。草鞋もボロボロだ。

『っ心機一転!仕事を探そう!!』

店を一件一件尋ねても、やはりこの汚い恰好じゃどこも雇ってもらえない。
断られ続け、昼に来たのにもう夜になりそうだった。
ここまで来て、また野宿かと。
どこかいい野宿先はないかと、
今度は目的を変えて歩き出した。
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