時をかける少女
□君のが良いの
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まぁ、欲しいとは言わないけど。
でもやっぱり・・・
「やっぱ、もらいてぇよ〜」
「なら、真琴に直接言えば良いじゃねえか。チョコレートくださいって。」
「お前馬鹿にしてんだろ」
「いや?馬鹿にはしてない」
とか言いながら、隣で雑誌を読む親友はわずかに頬を上にあげている。
「あぁ〜、バレンタインなんか虚しいだけだろ。周りはウカウカしてるし・・・」
「真琴からはもらえないし・・・ってか?」
「おぅ・・・」
俺にとっちゃ、バレンタインは真琴からもらえなければバレンタインとは言えない。
・・・と言うより俺はバレンタインさえあまり理解を得ないのに、いざ本番!・・って来たら無性に虚しくなるこの気持ち。
きっと周りの熱が知らぬ間にこちらにも流れて来ているのだろう。
うん。きっとそうだ。
「でも、真琴じゃない他の女子からは貰ったんだろ?」
「ウゥ〜・・もらったけど、一応全部下駄箱に入れっぱなしにしてある。俺、甘いもん嫌いだし」
「・・でも真琴からのチョコレートは欲しいんだろ?」
「おぅ」
「見事に矛盾してんな」
「うっせー」
大分人気の無くなって来た放課後の教室。
その中の、一体どれ位がその愛をぶつけたり、受け取ったりしているのだろうか。
「雪・・止まねーし」
「・・・そうだな」
「真琴・・まだかな」
「・・・女のトイレくらい待ってやれよ」
「いや、待つもなにもあいつがトイレ行ってから、もう30分以上経つけど・・・」
「・・・じゃあ、トイレに探しに行くか?」
「え・・・」
『千昭の変態!!馬鹿、死ね!!変態オレンジ頭!!』
真琴が顔を真っ赤にして怒る姿が頭をよぎる。
「・・・行こっかな」
「何を血迷ったこと言ってんのよ!!」
危うく変な道を行きそうになっていた俺と、それを軽蔑の目で見ていた洸介の座る二つの席の側に現れた少女。
「真琴・・・」
「ごめん遅くなって!!」
ペコリと軽く頭を下げて謝罪をして顔を上げた真琴の顔は、ほんわりと赤みがかっていた。
「今ね、近くのコンビニまで行ってたの」
「はぁ?トイレは?」
「ごめん。嘘」
べっと舌を出してニヒヒと笑うと、右手に吊るされていた白い袋を俺と洸介の目の前に差し出した。
「ハッピーバレンタイン!!」
「え・・・?」
ハッピー・・・バレンタイン・・?
「しょうがないから、この真琴様がわざわざこの雪の中買いに行ってあげたのだ!!感謝しろ!!ガッハッハッハ!!」
豪快に笑い声をあげる真琴には、女の欠片さえ感じられないが、俺は普通に・・・いや、普通以上に嬉しかった。
目の前にある袋を見てポカンと口を開けて間抜けな顔をしていると、洸介が肘で俺の腹を小突いて来た。
「(よかったじゃねえか)」
「(お、おぅ!!)」
口パクで会話を成立させると、今度はその光景を見ていた真琴が怪訝そうな顔でこちらを見て来た。
「何?二人で内緒話?」
ムゥと頬を膨らませる彼女は酷く愛しくて。
「いや?ただ、真琴の顔が寒さで腫れてブサイクだなって」
「なっ・・・悪かったわねブサイクで!!そんなこと言うなら、もう千昭にはチョコあげないっ!!」
「え!?や、やだ!!」
「ふーんだ。折角この寒い寒い雪の中、買いに行ってあげたのに!!洸介!!千昭の分も食べちゃって!!」
「え?まじ?ラッキー」
「あ、てめ!!」
その後俺は、洸介からちゃんとチョコレート奪って、真琴にはありがとうと言って、調子に乗って抱きしめたら殴られて。
嫌いって言われたけど、そう叫ぶ真琴の顔は真っ赤に染まってたからまぁいいや。
ちなみに真琴からもらったチョコは小さな小さなチロルチョコ三つだった。
でも、良いんだ。
いくら小さくとも、君からもらったチョコレートだということに変わりはないのだから。
ーENDー
(ホワイトデーは出かけようね!!千昭のおごりで!!)
(は!?)