時をかける少女
□帰ってきたあいつ
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「な……何でもない…」
「はぁ?何か言おうとしたんじゃねーのかよ?」
「何でもないったら何でもなっ…」
不意に感じた唇への感触。
「んぅっ……んっ…」
目を見開き、目の前で目を閉じている奴を認識して、グイッと力一杯に千昭を押し返す。
だが、全く効果は無く、逆にこっちが酸欠と恥ずかしさでぶっ倒れそうになる。
「ん〜〜っ!!」
も……駄目っ……
そう思うと同時に、くっついていた千昭が離れていった。
「はっ……はぁ……なに……すん…の!?」
「……キス…半分はおかえりの分で、もう半分は俺がしたかったから」
こっちが息切れで苦しいと言うのに、目の前で嬉しそうに……さぞかそ幸せそうに微笑む千昭を見てしまったら何も言えなくなった。
「……これから……ずっとこっちにいるの…?」
「さっきも言ったとーり、俺はもう、未来には帰れないし、帰るつもりもない。だから嫌でも、俺は生涯これから先、こっちの時代で暮らすことになる」
再度見せてくる千昭の左手首に、タイムリープが出来る証は書かれていない。
「〜〜……千昭のばーかっ!!!」
「は?お前、俺がいなくて寂しいから、夜な夜な泣いてたんじゃねーのかよ?」
「な、何よそれ!!まるで私が小さい子供みたいじゃない!!」
再会早々、言い合いをしているけど、私は嬉しくて嬉しくて仕方ないよ…
「なんて、口が裂けても言いたくない」
「あ?何が言いたくないって?」
「千昭には関係ありませんー」
「あ、そーですか」
ブスゥとふて腐れる千昭の唇に、今度は私から『キス』をしてやった。
「ま…真琴!?」
みるみる内に赤くなる千昭を見て、思わず吹き出してしまいそうになるのを必死に堪えて、千昭に一番最初に言いたかった言葉を言った。
「……おかえり、千昭」
すると、千昭は赤い顔のままそっぽを向いて、私を抱き寄せると、耳元で……本当に小さな声で「ただいま」と呟いた。
-END-