いつわり短編

□君想い
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俺は今まで何百年と生きてきて、好きな人なんて一人たりとも出来たことなんて無かった。
色んな奴らの死に場や、生き場。
見たいものから、見たくないもの。
沢山の経験もしてきた。

人間の善悪を知ってしまい、真面目に生きる程無駄だと思った。
楽しいことや面白いことは大好き。
それ以外は興味無し。
そんな自分が出来上がる頃にはもう他人に興味さえ持たなくなっていた。
勿論好きな異性なんているわけないし、できる筈もない。
好きになろうとも思わなかった。

…だからかもしれない。

何もかもを知ってた筈の自分の前に現れた彼女に興味を持つようになったのは。

















「にゃんにゃん、今日も料理を作ってみたわん」

彼女が俺に料理を差し出す時は決まって味見をして欲しい時だ。

「わ、うまそー!」
「今日はにゃんにゃんが好きな握り飯よん」
「わぁー、まじで?え、これ食べていいの?」
「勿論よん」

勿論…その言葉が俺にとってどれだけ嬉しいものか、きっと彼女は知らない。

「…姫さん、また腕あげた?」
「そうかしらん?」
「うん、形も綺麗な三角だし…何より美味しいよ」
「なら良かったわん」

俺の座っている樹の根本の隣に腰を下ろす彼女に、不覚にも俺の心臓は高鳴る。
彼女独特の甘い香りが鼻をかする。

「美味しいなぁ…俺さ、今まで長く生きてきてこんなに美味しいもの食べたの久しぶりだよ」
「にゃんにゃんが喜ぶと妾も次の励みになって、ありがたいわん」

ありがたいのは寧ろ俺の方なんだけどな……。

「…ねぇ姫さん。残りの二つも食べて良い?」
「…………」
「…姫さん?」

返事が無い彼女を見ようと首を回す。
そこには確かに彼女が映り…しかしそれは横顔で、その視線はどこか遠くを見つめている。
俺は彼女の視線を辿り、そこにいた人物に体が強張る。

空くん……と、あれは……

「正直言うと…ねーやんは……空様とお似合いだわん……」

二人並んで歩く空くんとねーちゃん。
楽しそうに…いや、あれは空くんが一方的にねーちゃんをからかってるだけに見えるけど、確かに俺たちの距離から見える二人は…まるで一組の恋人みたいだった。

「妾…本当に将来、空様の妻になれるかしらん……」

彼女は彼…空くんに想いをよせている。
今隣にいる俺ではなく……彼に。

「姫さん……」

横から見た彼女は、どこか儚げで……
光の反射のせいなのか、なぜだか俺は彼女が泣いているように見えてしまった。

「妾……ねーやんに嫉妬してるみたいだわん」

フッとこちらを向いた彼女は、眉毛を少し傾けながら今にも泣きそうな顔で。
そして…にこりと笑った。

その時…プツンと俺の中で何かが弾けた。

「〜っ…姫さん!」

衝動的に動いた体は隣に座っていた彼女を力一杯抱きしめていた。

「にゃ、にゃんにゃん!?」

残念ながら彼女の表情を見ることは出来ないけど、少なくとも自分のでは無い強く波打つ心音はきっと彼女のもの。

「……俺さ…姫さんのこと…好きだよ」

そうだ…俺は君を見たときから、今までに感じたことのない感情を抱くようになったんだ。

「…妾もよん?」
「!!…え、でも…」
「空様も勿論好きよん?でも妾は、にゃんにゃんも好きよん」
「え、それって二股……?」
「違うわん。…空様の好きとにゃんにゃんの好きはちょっと違うのよん」
「そう…なんだ…」

なんかわかんないけど……
俺、今嬉しいって思ってるかも。

「ごめん姫さん…もうちょっとこのままでいさせて?」

コクンと頷いたのが分かって、俺はきゅっ…と宝物を抱きしめるように、今度は優しく姫さんを抱きしめた。

うん…今はこのくらいがちょうど良いのかもしれない……。
彼女が俺を好きだと言ってくれただけで……もう十分なんだきっと。


















あ、やっぱり最終的には彼女の一番になりたい……
それが、俺の今の夢。






























「あ、そういえばにゃんにゃん」
「ん?」
「今日の握り飯は味見じゃなくて、妾がにゃんにゃんの為に作ったものよん」
「……ぇ…まじで…」

うん、決めた、宣言する。
俺…絶対空くんより姫さんの特別になってみせる。
いや、なってやる。絶対。






































オワター\(^o^)/
始めての控・岩清〜!
はい、いつものごとくまとまりのない文……誰か文才プリーズ。

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