いつわり短編

□身を焦がす
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恋は甘酸っぱいもの。とはよく言ったもので、まわりの女子はいつもきゃあきゃあと好みの男子について話している。


そんな彼女らを見ていると本当に恋は甘く、それでいて酸っぱいものなのかもしれない、と感じることもある。



が、



この気持ちは甘酸っぱいなどという可愛らしいものではなく、確かな“痛み”だった。



「ねーちゃん」
そう名を呼べば振り向くその姿に、いちいち自分の気持ちを再確認する。
「空さん?」
不思議そうな顔をするねーちゃんも、授業中に必死で眠気と戦うねーちゃんも。


みんな好きだと思う。
愛しいとさえ思ってしまう。


「空さん、まだ数学のノートまだですわよね?」
「あー、あれな。烏頭目が写すとかで持ってってん」
「でしたら、烏頭目さんからもらってきますわ」


そう言って去っていくねーちゃんの腕を掴みたくて、掴むのはとても怖くて。


痛みは日々確実に大きく膨れ上がってゆく。
誰にも言えないこの痛みがいつか、ねーちゃんと共有できるのだとしたら……


もしそんな未来がくるとしたら、どんな痛みにも耐えることができるだろう。


でも、もしも――



「ブザマやなぁ……」

そう言って、額に手をやりながら笑った。


もしもそんな未来がくれのならば……


そんな未来を想像することが許されるのなら……









end
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