いつわり短編
□ハピバ!烏頭目
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9月6日。
今日は私が大好きで大切な幼なじみの誕生日。
今年こそ誰の力も借りずに頑張ろう!
…そう決めた筈なのに……
「…で、なんでこんなことになったワケ?」
「………」
壁や机にすっ飛んだまま放置されている生クリームに、焦げに焦げた黒い塊。
急遽呼び寄せたもう一人の幼なじみの蝶左は、私の作った料理達を見て、何とも言えないと言った顔をしている。
「これなんか…ダークマターみたいだな…」
蝶左が指差すそれは、もはや元が何だったのかさえ分からないケーキのスポンジ。
「…作り方…よくわからなくなって…」
「…で、その結果がコレなワケ?」
「はい」
横からため息が聞こえるのはきっと幻聴だと思う。
「…どうしよう…烏頭目が来るまでもう時間が無いよ…」
せっかく誕生日を祝ってあげようと思ったのに……
そう思ったら涙が出てきた。
「っ…どうしようっ…」
「え、まさか泣いてるワケ?」
「泣いてない……目が痒いだけ…」
暫しの沈黙…先に声を出したのは意外にも蝶左だった。
「………はぁ……一から作り直すワケ」
「え…」
私が顔を上げた時にはもう蝶左は動きだしていた。
「今からならまだ間に合う。…俺も手伝うから」
表情は伺えないけど、蝶左の声はやっぱり優しかった。
なんだかんだ言って、最後にはやってくれる。それが彼の長所だと私は思った。
「……ありがとう蝶左」
「ん。」
数十分後にはこの家へ来るであろう幼なじみの為にも、私達は精一杯頑張った。
「こんなもんで大丈夫か?」
額にうかぶ汗を拭いながら、机に並べられた沢山の料理達を見て蝶左は満足気に言う。
「うん!ちょっと量が多いけど…烏頭目は結構食べるから大丈夫かな!」
あの後、結局材料などを再度買って来て、料理上手な蝶左を中心に私が作ろうとしていたものを作り直していった。
私はとりあえず蝶左が出す指示に従って準備を進めた。
「よし。じゃあ…俺は急いで使ったもの洗うから、お前は適当におめかしでもしてこい」
「え、でも……食器は私が洗うって決めてた…」
「いーから。そのままの格好で烏頭目に会ったらドン引きされるワケ」
「ど、ドン引きはやだっ…」
「…なら、さっさと手洗って着替えて来るワケ」
「…ありがとう」
幼なじみの優しさに甘えて、私は自分の部屋に向かった。
「蝶左ー」
「んー?」
「着替えてみた」
豪勢な服…まではいかないけど、さっきの汚れた服よりは大分マシになった筈。
「おー、いいんじゃね?」
蝶左が濡れた手を拭いていると、家のインターホンが鳴った。
「みなもー?約束通り来てやったぞー」
本日のメインゲストが大声で外から私に尋ねる。
それがなんとなく面白くて、思わず蝶左と笑いあった。
「早く開けてやるワケ」
「うん!」
優しい幼なじみから力を貸してもらってのギリギリ準備だったけど……
『ガチャ…』
烏頭目の顔が扉から覗くのを狙って、私と蝶左は互いに手にしていたクラッカーを烏頭目に向かって鳴らした。
「「お誕生日おめでとう烏頭目!」」
おぉぅ…
遅くなってしまった泣
またまた何が言いたいのか分からない内容ぉぉ涙
烏頭目、誕生日おめでとー!