いつわり短編
□一緒が良いんだ。
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*この話は、白犬の恩返し?の続話となってます。
ガチャリ。
家の扉をゆっくりと開ける。
それはまるで、泥棒が他人の家を襲う時の様な開け方で。
そして私は、紛れも無い程ドキドキが止まらない心音を抑えて、来るだろう衝撃に身構える。
「ただい」
「ねーちゃぁぁぁぁああん!!!」
「きゃっ!!」
瞬間、目の前が白に埋め尽くされて、息が出来ない位にキツく抱きしめられる。
「おかえりやぁぁー!!」
抱きしめられた次には、火が出るんじゃないかというくらいの勢いで頬擦りをされて。
彼独特の優しい匂いが、頬擦りされる度に鼻をこする。
「た、ただいまですわ」
とりあえず、そう呟いてみたものの白髪の動きは止まらず、思わずため息。
「空さん・・・いい加減離し」
「やだ」
まさかの即答。
大学が終わって、やっと家に帰れる・・・
でも、世の中スムーズになんかいかなくて。
その一番の原因がコレである。
ある雨の日、出会った子犬。
それはそれは、思わず見惚れてしまう程の美しい白い毛を持った子犬だった。
・・・そう。
『だった。』だ。
「ん・・・?ねーちゃん・・今日、誰かと必要以上に触れ合ったか?」
「え・・・」
クンクンと、鼻を動かしながら隅々まで私の身体を嗅ぎ回る彼。
「・・・男・・」
「え?男?」
「クサイ・・。ねーちゃんの匂いに混ざって、変な匂いがするんや」
ヌゥ・・と眉間に皺をよせて、ゆっくりと私の顔を見ると、今度は泣きそうな顔をしている彼がいて。
元が犬だからなのか・・いや、それしか理由が無いが、彼は非常に鼻がきく。
元が犬。
これには色々と理由があって・・・。
とりあえず、彼は元々人間ではなかったのだ。
しかし、彼と出会ったその日に、私は彼に・・・その・・ふぁ、ふぁ、ファーストキス!!!・・を奪われ彼はめでたく子犬から人間になった訳で。
それからは、彼と暮らしている。
理由は単純。
彼には住む家が無いから。
「なぁ、ねーちゃん」
寂しげな顔。
最近の彼は、この顔をよくする。
寂しいよ・・・
寂しくて仕方がないよ・・
そんな、心の叫びが聞こえてきそうな程彼の顔は歪んでいた。
「ワシ・・・」
何かを言おうとして、でもそれは喉の奥にしまい込んで。
開いた口は、パクパク動かすだけで、暫くすると閉じられる。
「あの・・空さん?」
俯いてしまった彼が、何だか心配で腕を伸ばせば、バッと避けられて・・・
「ぁ・・・」
ポロリ零れる彼の声が、私と彼の間を余計広げた。
「〜〜っ・・あかん!!もぉ、我慢なんて限界や!!」
「へ!?」
「決めた!!ワシも大学行く!!」
「え、」
・・・大学?・・大学・・・
「大学!?」
「せや!!もー、我慢なんて無理や!!何時間待てぇやらせる気ぃや!?」
バリバリと頭を掻き回し、ふてくされる様に彼はその場に胡座をかいてドカリと座り込んだ。
「なぁにが大学や!!ワシの閨を何時間も奪いおぉて!!」
「わ、わしの閨・・・私、いつから空さんのモノになったんですの!?」
ギラリ。
空さんの鋭い眼光に、私の身体は動かなくなる。
「いつから?いつから・・ねぇ?・・ねーちゃんがワシを助けてくれた時からとかぁ?」
「わ、私は誰のモノでもありませんわ!!」
・・ピクリ
これはまさか、地雷を踏んだか。
「へぇ?」
ゆらりと立ち上がり、私の目の前に立ちはだかると、いつもの顔に戻った彼が私を捕まえて離さなくて。
「そんなこと言うねーちゃんには、今からたっぶりとワシのモンてゆー『印』つけなあかんなぁ?」
「あ、はい、嘘ですわ」
「カカカ・・・何を今更。嘘は馬鹿につくもんや」
優しく抱きしめられれば、私は彼に従う選択肢を選ばざるを得なく。
「ワシが大学入ったら、一分一秒足りとも離さんわ。」
「べ、勉強になりませんわ・・・」
「勉強なんか、ワシが教えたるわ」
そうすれば、ワシとねーちゃんはずっと一緒におれるやろ?
ーENDー
(このクサイ臭いの奴も探せるしなぁ?)