いつわり短編
□白犬の恩返し?
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『ザァァァ……』
「……拾って…ください…?」
……今日は生憎の大雨。
バケツをひっくり返した様な勢いで、朝から振り続けている、この雨の中。
一人の女学生が、道の脇に突っ立っていた。
『誰かこの子を拾ってください』
そう書かれた札が、ぼろぼろの段ボールに貼り付けられて、道の脇に置かれている。
「あなた……捨てられたんですの…?」
段ボールの中で、泥まみれになった小さな犬が女学生に向かって唸っている。
「グルル……」
警戒体制をとってはいるものの、痩せほそっているせいか、鋭い瞳はくすみがかかり、虚に見える。
「……どうしましょう…」
たまたま通りかかっただけ。
でも、このまま通りすぎることも良心が痛む。
「ブシュッ!!」
「え……」
変な声に驚き、眼下にいる小犬を見つめると、カタカタと身体を震わして、グッタリとしている姿が目に入った。
「……くしゃみですのね……一緒に帰りましょう…」
女学生はビショビショになりながら、小犬を胸に抱え、自宅のマンションへと走った。