いつわり短編
□季節と共に…
2ページ/2ページ
「………さっきの雪……ワシが投げたんやで…」
「え?」
唐突な言葉に、ビックリとした顔の閨とは対象的に、空は嬉しそうな顔をした……多分。
「……静かな夜やなぁ……」
「?……そうですわね…」
すると、空は髪を上げるために巻いていたバンダナを取り、閨の首に優しく巻き付けた。
「な…何するんですの!?」
「…………」
返事をせず、更に空は着ていた黒い上着を脱ぎ、閨に羽織らせた。
「……空さん?」
「…………」
またもや返事をしない空は、そのままゴロンと横になった。
「ちょ…空さんこれ……」
「防寒具や……お礼の変わりにここ貸してえや」
「お礼って……」
閨の眼下には、己の膝に頭を乗せる空の顔があった。
「………冬はええのぉ……」
「……あの…恥ずかしいですわこれ…」
だが、空はそのまま狸寝入りに入り、知らず知らずに閨も瞼を閉じていった。
「…………たまには野宿もええもんや……」
………冬………それは命が安らかに眠り、暖かさを求め、人達がより絆を深める静寂の季節……
-END-