いつわり短編

□静寂の鐘
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『ーン……リン……ーン……ゴーン……リーン……』


真っ白の中に、真っ赤な薔薇達……。
薔薇を咲かせた美しい死体……
見覚えのある顔が………全部…。


「………死んじゃった……死んじゃった……大切なもの……死んじゃった……」


何だか分かんないけど、遠くの方で古びた音が聞こえる……。
とても穏やかで……
静かなこの場所を更に黙らせるよう……
……まぁ、俺以外誰もいないんだけどね………。


「空……ぽち………ねーちゃん……こじゅ……猫目……姫さん……みなも……」


皆死んじゃった……
大好きだったのに……
大切だったのに……


「蝶左……ごめんね……」


誰よりも馬鹿だった俺に、いつも蝶左は、ぶつぶつ言いながらも気にかけてくれてたよな………


「………不思議だな……何でこう言う時に限って、俺はまともな発言ばっかすんだろう……」


何で………
こんなにも、悲しいのに涙が出ないんだろう………?


……………………………涙?


「………涙……涙って何……?」


ねえ蝶左………


「涙って何……?……涙って何なの……?」


ねえ答えてよ………


「ねえ………誰でも良いから答えてよ!!!」


……………あは……


「………もう……死んじゃったから……答えてくれないか……」


『ピチャッ……ピチャッ……』


「…………ごめんね……」




烏頭目の姿が真っ白な霧に吸い込まれていくと、また遠くの方で古い鐘の音が鳴った。


-END-

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