モノクロ少年少女

□抱き枕にするなら
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「蝶ちゃん、ここって生徒会室だよね?」

「立派な生徒会室ですわ」


若干背後に感じる殺意の目。


「でも蝶ちゃん。あそこで抱き合ってる男女がいるんだよ」

「蝶々、あの二匹見たことありますわ」


ハッキリ感じる殺意の目が二つ。


「ねぇねぇ蝶ちゃん。あのクロヒョウみたいなの殺しても良いかな〜?」

「良いと思いますわ。蝶々、暖かい目で横流しに見てますわ」


殺人予告してる奴一匹に、訳の分からない発言してる奴一匹。

うん、まずい気がしてきた。


「ん・・・よく寝・・・え、右京?」


そこへまた、最悪なタイミングで夢から覚めたすべての原因。
あ、俺の人生・・・いや、獣生?終わった・・・。


「え、右京?それに茅と蝶々まで・・・」


本当に今日はタイミングが悪いんだか、良いんだか・・・。
いや、悪い。最悪だ。


「てか、右京・・なんでこんな近い・・・」

「呉ちゃんが寝てるところを、そのクソヒョウが襲おうしてたんだよ!!」

「あ!!てめっ」

「いえ、蝶々達が来た時にはすでに襲ってる真っ最中でしたわ!!」

「なんつーこと言ってんだお前ぇは!!!」

「え、襲って・・・え!!?」


あーあー、もう訳が分からない。
今さっきまでは幸せ絶頂に・・・て俺はこんな時に何を考えてんだ!!


「う、右京・・・お、おそ、襲ったって・・・」

「なっ・・お前ぇが寝ぼけて抱きしめてきたんじゃねぇーか!!」

「うっきょん、嘘はいけないよー!」


まずはあの煩いトラ野郎を黙らせるか、と思って振り返れば、ニヤニヤ顔のトラ野郎とオオカミ女。


「ま、後は呉ちゃんに任せるよ!」

「へ?」

「そうですわね。では、蝶々達はこれで」

「あ、蝶々!茅!」


パタン。
とんだ誤解を招いて去って行ったトラとオオカミは、あとでしばいとこう。

それより、今はこのポカンとしてる兎をどうにしなければならない。


「あー・・・チビブス?」

「え?あ、え、な、何?」


わたわたと焦りを隠せていないこの兎。
あー、自分がさっきまでこいつの抱き枕になってたなんて考えらんねぇ。


「あんなトラ野郎の嘘、信じんじゃねぇぞ」

「え、あ、襲ったってやつ?」

「そうだよ」

「ま、まぁ、何となく嘘だって分かったけど・・・」

「けど?」

「そ、その・・・私から右京を抱きしめたって・・・」

「・・・ほんと。ま、俺は・・・俺は・・」


『俺は嬉しかったけど』




・・・って、
何とんでもねぇことを俺は言おうとしてんだ!?
しっかりしろ右京!!

心情パニックな俺を、更にパニックにさせるようなことをこのチビブスは言いやがった。


「そ、そうなのか・・・。いや、なんか妙に眠れた気がしたから・・あ、ご、ごめんなっ?ずっと動けなかっただろ・・それと、あ、えと・・・ありがとぅ・・・」

「・・・は?」

「いや、だからさ、その・・嫌がらずにずっと抱きしめられてるの我慢してくれて」

「っ・・・・」




ヤバイ・・・
可愛すぎる、こいつ
あーもー、そうやって顔赤らめて!!
ヤバイ・・・もぉ、すんげー今こいつのこと抱きしめてやりたい。


「じゃぁ・・・わ、私はこれで・・」


用事があるから、と部屋の扉の方にコソコソと歩いて行く兎。


「・・・待て」


グイッと腕を引っ張って、自分の腕に閉じこめれば、たちまち早く打ち始める兎の心臓。

あ・・・止まらないかも。


「謝ったり、お礼言うなら、暫く俺に抱きしめられてろ。それで、今回は全部許してやる」


自分で言って、自分が赤くなってるなんて割りに合わない。


「う、右京・・・」

「俺を長い間抱き枕にしたお前に拒否権は無いからな」


今度は俺がお前を抱き枕にする番だ






ーENDー
(う、う、右京?茅たちが窓の外から・・・)
(なっ・・・てめぇらぁぁぁぁああ!!!)
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